2007年に東京ミッドタウン内にオープンした21_21 DESIGN SIGHT。英語では優れた視力を「20/20 Vision(Sight)」と表現する事から、さらにその先を見通す場でありたいという思いから命名されました。
2021年からちょうど100年経つと、2121年。館名と同じ数字となる100年後の世界に想いを巡らせ、未来をテーマにした展覧会が同館で開催中です。
21_21 DESIGN SIGHT 会場入口
会場に進むと、通常の展覧会とは逆の動線です。
長い通路を使い、宇宙の誕生から現在までの138億年の歴史を、地球時間1年(365日)のスケールで体感できるインスタレーションからスタートします。
「宇宙138億年の歴史を歩く」
「宇宙138億年の歴史を歩く」
大きなギャラリーには、白い壁面に文字が目立ちます。
会場中央にあるのが「Future Compass」(未来の羅針盤)。3層の円盤を回し、21のキーワードを組み合わせた「言葉」をつくり、その言葉から未来に向けた「問い」を導き出していきます。
中央が「Future Compass」(未来の羅針盤)
展覧会では参加作家72人が「言葉」から「問い」をつくり、その問いに対して「インサイト(視座・洞察)」を形にしました。いくつかご紹介しましょう。
佐藤卓が「Future Compass」で選んだ言葉は「What / Future / Change ?」、問いは「ゴミの概念が変わる?」。ボトルに入っているものは全て再利用で生まれた素材です。
ちなみにボトルも再利用品。1984年の「ニッカウヰスキー ピュアモルト」で、佐藤卓が自分でデザイン事務所を始めて最初の仕事でデザインしたものです。
佐藤卓
こちらは深澤直人。「How / Future / Imagine ?」で、問いは「どうやって未来を想像しますか?」。
100年後になると、食べ物のもとの形を知る人がいなくなるのでは、という仮説から、3Dプリンタで果物のかたちをつくり、ジュースのパッケージにしました。
深澤直人
「Future Compass」の展示以外に、「未来」を考える際に必要となるコンテンツも展示されています。
「地球の時間軸」では、岐阜県美濃地方の鉱山で採れた花崗岩と様々な土のキューブ、その土の層から見つかった炭化した木を展示。500万年前から1000万年前という時間を内包しています。
「地球の時間軸」
「タイムモノリス」は、三本の透明な四角柱(モノリス)。高さは100年を表し、、モノの変化を可視化しています。
三柱はそれぞれコンパクトカメラ、音楽記録媒体、携帯電話で、下段にはLPレコードや小型カメラがありますが、最上部ではすべてスマホになり、テクノロジーの進化による新たな現象を展示しています。
「タイムモノリス」
なお「Future Compass」はオンライン上でも体験可能。3つの言葉を選ぶと、同じ組み合わせを選んだ作家の「問い」や「インサイト」などを見る事ができます。
展覧会のディレクターは『WIRED』日本版編集長の松島倫明。エッジが利いた構成で、いかにも21_21 DESIGN SIGHTならでは、という展覧会です。
※会期は2022年5月22日(日)まで延長になりました。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年12月20日 ]