イギリスを代表する現代作家、ダミアン・ハースト(1965-)。ホルマリン漬けの動物などセンセーショナルな作品に比べ、1980年代後半以降、継続的に抽象絵画に取り組んで来たことは、あまり知られていないかもしれません。
ダミアン・ハーストの最新作である〈桜〉シリーズを紹介する展覧会が、国立新美術館で始まりました。
国立新美術館 企画展示室2E「ダミアン・ハースト 桜」会場入口
日本で初めての開催となる、ダミアン・ハーストの大規模展。今回の展覧会では、107点からなる〈桜〉シリーズから、ハースト自身が24作品をセレクトしました。
展示空間には作品キャプションがないので、展示室入口のガイドマップをお持ちください。
ガイドマップ
展示室に進むと、まさに桜一色。桜並木の下に身を置いた時のような感覚を覚えます。
天井高も高く、広々とした国立新美術館の展示室ですが、作品は小さなものでも274✕183cmとかなり大きいので、ボリューム感もたっぷりです。
国立新美術館 企画展示室2E「ダミアン・ハースト 桜」会場
どの作品も桜を描いたものですが、よく見ると、作品ごとの差も感じられます。
枝が目立つもの、ほぼ画面いっぱいが花で覆われているもの。花も淡いピンクが主体のもの、白が目立つもの。ベースになっている空の色も、作品ごとに微妙に差があります。
ダミアン・ハースト《神聖な日の桜》2018 カルティエ現代美術財団コレクション
ダミアン・ハーストがキャリアの初期に手がけていたのが、色の異なる点をグリッド状に配置した絵画の〈スポット・ペインティング〉シリーズ。
その後、円形に色を広げる〈スピン・ペインティング〉、細かな点描の〈ベール・ペインティング〉などのシリーズから、実際の樹木をモチーフにした〈桜〉シリーズへと進んでいきました。
ハーストの絵画に対する思いは、展覧会の公式サイトにある動画をぜひご覧下さい。
国立新美術館 企画展示室2E「ダミアン・ハースト 桜」会場
展示作品で一番大きいのが《この桜より大きな愛はない》。実に549✕732という巨大サイズです。
展覧会は、また肌寒い3月から始まりましたが、もうすぐ会場の国立新美術館のまわりでも、満開の桜が見られるでしょう。
ダミアン・ハースト《この桜より大きな愛はない》2019 個人蔵
今、一番新しいダミアン・ハーストを楽しめる展覧会。これまでの歩みも含めて、さらにダミアン・ハーストの世界を知りたくなりました。
会場は一般の方も撮影可能です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年3月1日 ]