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    レポート
    未来へつなぐ陶芸 - 伝統工芸のチカラ 展
    パナソニック汐留美術館 | 東京都
    日本工芸会陶芸部会50周年の記念展覧会。人間国宝の作品など技と美が集結
    窯業地ならではの素材と伝統を受け継いだ作家の作品や、茶の湯のうつわも
    新たな素材や独自の技法、未来を担う気鋭の若手作家が手がけた作品も注目

    世界に誇る、日本の工芸技術。1955年に日本工芸会が発足し、なかでも会員数が最も多い陶芸部会は1973年に「第1回新作陶芸展(陶芸部会展)」を開催して、現在に至っています。

    日本工芸会陶芸部会の活動が2022年に50周年を迎える事を記念し、同会で活躍した作家の秀作とともに、その活動の歴史を振り返る展覧会が、パナソニック汐留美術館で開催中です。



    パナソニック汐留美術館「未来へつなぐ陶芸 - 伝統工芸のチカラ 展」会場入口


    展覧会は第1章「伝統工芸(陶芸)の確立」から。ここでは日本工芸界の初期の活動を支え、その存在を広く知らしめた重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝などの作品が紹介されています。

    清水卯一による《青瓷鉢》は、口が大きく開いた薄作りの鉢です。釉面に入ったひび割れ「貫入(かんにゅう)」が広がっています。このように貫入が入った青磁は「氷裂文」とも称されます。



    (右手前)清水卯一《青瓷鉢》1973年 東京国立近代美術館


    無形文化財の中で重要な技として指定されているのが、重要無形文化財。その技を高度に体得している人が、重要無形文化財の保持者(人間国宝)です。

    重要無形文化財の保持者が初めて認定されたのは、1955年2月15日。陶芸分野では、荒川豊蔵、石黒宗麿、富本憲吉、濱田庄司の4名でした。



    (左から)濱田庄司《柿釉赤絵角皿》1970年 東京国立近代美術館 / 富本憲吉《色絵金銀彩四弁花染付風景文字模様壺》1957年 東京国立近代美術館


    第2章は「伝統工芸(陶芸)のわざと美」。伝統を意識しながらも、それぞれの作家による創意工夫で、多彩な展開を見せてきた伝統陶芸の技と美の広がりを紹介しています。

    福吉浩一の《炭化線象嵌鎬花器》は、異なる土を組み合わせる象嵌で、線状の模様を表現しています。黒い発色は、炭素を吸着させる技法です。



    (左から)福吉浩一《炭化線象嵌鎬花器》2020年 / 西田真也《象嵌泥彩扁壺》1993年 東京国立近代美術館


    日本には多くの窯業地や産地があり、その場所の素材、その地に伝わってきた技術・技法を応用し、特徴ある作品が生み出されてきました。

    三代徳田八十吉は、陶芸を始めた当初は伝統的な九谷の色絵に影響を受けた作風でしたが、後にグラデーションの作品へと移行していきました。



    (左手前から)三代 德田八十吉《耀彩鉢 創生》1991年 東京国立近代美術館 / 福島善三《中野月白瓷鉢》2017年 茨城県陶芸美術館


    第3章は「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」。伝統工芸における陶芸は、単なる伝承ではなく、革新や創造など新たな展開を見せています。この章には、まさに“いま”を感じさせる作品が並びます。

    黒・白・赤の色合いが鮮やかな、増原嘉央の《鉢「紅白鮮斜陽 ─1907─」》は、焼成後に黒くなる土に白い化粧土をかけ、生乾きの状態で針で掻き落とし、その模様に赤い絵付けを施したもの。複雑な工程が強い存在感を支えています。



    (左から)渡邉国夫《色絵銀彩青晶文鉢》2020年 / 増原嘉央《鉢「紅白鮮斜陽 ─1907─」》2019年 / 小山耕一《彩色正燕子六稜鉢》2015年 茨城県陶芸美術館


    工芸にはそれぞれ唯一無二の素材があり、その素材をかたちにする技術や技法があってこそ、独自の展開に繋がります。

    隠﨑隆一の《備前広口花器》は、大理石を思わせるような表情。備前に用いられる田土は近年産出量が減っており、隠﨑は田土を採る際に捨てられていた多種多様な土を利用。玉石混淆の土を「混淆土(こんこうつち)」と名付けて、制作に用いています。



    (左から)隠﨑隆一《備前広口花器》2012年 / 神農巌《青磁堆磁線文鉢》2011年 / 石橋裕史《彩刻磁鉢 瀝瀝》2011年 兵庫陶芸美術館


    東京国立近代美術館をはじめ、全国の美術館から逸品が集結した豪華な展覧会。大型の作品が多いこともあり、会場を埋め尽くすようなボリューム感も見ものです。

    パナソニック汐留美術館を皮切りに、展覧会は全国8会場を巡回します。会場と会期はこちらです

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年1月14日 ]

    (右手前)藤原啓《備前緋襷水指》1959年 東京国立近代美術館
    (左から)伊勢﨑淳《備前黒角皿》2005年 東京国立近代美術館 / 市野雅彦《赤ドベ采器》2021年 / 五代 伊藤赤水《無名異練上鉢》1985年 東京国立近代美術館
    (左から)松川和弘《青白磁菱角鉢「緋」》2008年 / 古川拓郎《釉裏白金彩鉢》2021年 / 木村芳郎《碧釉漣文器》2020年
    (左から)伊勢﨑晃一朗《打文花器》2021年 / 渋谷英一《黒彩器 ─相─》2019年
    パナソニック汐留美術館「未来へつなぐ陶芸 - 伝統工芸のチカラ 展」 第3章「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」
    (左手前)中田博士《真珠光彩壺》2020年 茨城県陶芸美術館
    会場
    パナソニック汐留美術館
    会期
    2022年1月15日(土)〜3月21日(月)
    会期終了
    開館時間
    午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
    ※2月4日(金)、3月4日(金)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
    休館日
    水曜日 ただし2月23日は開館
    住所
    〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1  パナソニック東京汐留ビル4階
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://panasonic.co.jp/ew/museum/
    料金
    一般:1,000円、65歳以上:900円、大学生:700円、中・高校生:500円、小学生以下:無料 
    ※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
    展覧会詳細 「未来へつなぐ陶芸 ― 伝統工芸のチカラ展」 詳細情報
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