展覧会は西郷の肖像画から。多くの幕末の名士と異なり、肖像写真を残さなかった西郷。生前の西郷に幾度も接した庄内藩士・石川静正が西郷没後に描いた肖像画は、もっともよくその風貌をとらえたものとされています。
1853年の黒船来航で、日本は大きな転換点を迎えました。開明的な薩摩藩主・島津斉彬に見いだされた西郷は、篤姫と将軍家定の婚礼実現に尽力。政治の表舞台に歩を進めていきます。
プロローグ「西郷と薩摩」、第1章「船出」1858年、井伊直弼による安政の大獄で、大きな打撃を受けた尊王攘夷派。西郷も奄美大島での潜居、徳之島と沖永良部島への遠流と、厳しい時代を過ごしました。
展覧会には、沖永良部島時代の珍しい資料も。座敷牢の中で西郷が作ったと伝わる疑似餌が展示されています。巨漢の西郷ですが、意外にも手先は器用でした。
第2章「流転」1864年、藩に呼び戻された西郷は、禁門の変、薩長同盟、そして戊辰戦争と、幕末動乱のド真ん中で活躍します。
長州征伐、薩長同盟に関する資料、討幕の密勅(6/19~は複製)、錦旗など、この章には歴史ファンにはたまらない資料が並びます。
第3章「飛翔」盟友・大久保利通と明治維新を成し遂げた西郷ですが、両者の間の亀裂は少しずつ広がっていきます。国内最後の内戦・西南戦争で敗れた西郷は、1877年に自刃。一方の大久保も翌年に暗殺されました。
逆徒になった西郷ですが、その人柄は多くの人に慕われました。憲法発布にともなう大赦で復権し、明治天皇を含む多くの人々からの寄付で「上野の西郷さん」が建てられました。制作途中の木型の西郷像写真は、まだのっぺらぼう。顔の制作に苦心していた事がわかる、貴重な資料です。
第4章「英雄」、エピローグ「人々の中の西郷」いつもは江戸東京博物館で開催されているNHK大河ドラマ特別展ですが、今回は「上野の西郷さん」近くの
東京藝術大学大学美術館での開催です。東京展の後に大阪・鹿児島に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年5月25日 ]■西郷どん 東京藝術大学 に関するツイート