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    北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その2)

    「北アルプス国際芸術祭 2020-2021」のレポート第2弾。引き続き、気になった作品をご紹介します。



    会場を巡回していたラッピングカー。芸術祭の周知には最適だと思います。


    こちらは、本展でも特に印象に残った作品のひとつ。4年前に閉鎖された「酒の博物館」に、竹を素材にしたサウンドオブジェが展示されました。

    自動演奏によるサウンド・インスタレーションは、耳に優しい素朴な竹の音。影絵と動く仕掛けを同時に見せ、空間全体がほっこりとした空気に包まれています。小さな子どもが一心不乱にオブジェの動きを眺めているのも印象的でした。

    作者の松本秋則は、1980年代からサウンドオブジェを制作しています。東京の美術館での大規模展を期待したいところです。



    松本秋則《アキノリウム in OMACHI》


    松本秋則《アキノリウム in OMACHI》


    カラフルさが目を引くこの作品は、紙の彫刻。床と壁面が鏡面になっており、極彩色の作品世界が広がります。

    作者は中国のリー・ホンボー。中国伝統の影響を受けながらも、紙に対する人々の概念を覆すような独特な表現を得意としています。



    リー・ホンボー(李洪波)《童話世界》


    こちらは、かつて鉄工所として使われていた場所を利用した作品。青い長方形の作品がいくつも吊るされ、礼拝堂のステンドグラスのようにも感じられます。

    鑑賞者は作品の中に入ると、大町の“山・湖・谷”をイメージした作品は自然光に浮かび上がり、工場内は光で満たされます。



    エマ・マリグ《シェルター -山小屋-》


    豪快なこちらの作品は、ウガンダの作家による制作。作品のタイトル《アマーニ・ガ・ナブジ》は「ナブジの強さ、その理由は早い段階で加工される=手に負えなくなる前に複雑な状況は阻止する」という意味です。

    作品のかたちづくっているのは、ウガンダの樹皮布と、大町の味噌樽や米育苗箱です。自然の恵みと地域の暮らしを表現しています。



    ドナルド・ワッスワ《アマーニ・ガ・ナブジ(ガーモクヤ・アチャーリ・モト)》


    こちらの作品は、空家の2階に展示されている、種や植物でつくられたカラフルな絨毯。材料は信濃大町の森で、信濃大町の人によって集められました。

    種は展示終了後に希望者に配布され、育っていく予定。普段見落としてしまう、小さなものの重要さに気付かせてくれる、あたたかい作品です。



    蠣崎誓《種の旅》


    大町名店街に描かれているのは、淺井裕介の作品です。2014年の「信濃大町2014 −食とアートの廻廊−」で制作され、恒久展示されています。

    淺井は道路用白線素材や土を使った巨大な壁画や地上絵を国内外で発表、その作品を目にする機会も増えました。今回はこの作品の他に、大町エネルギー博物館の外壁にも作品を描きました。



    淺井裕介《すべては美しく繋がり還る》


    こちらは、おもちゃ箱をひっくり返したような空間。麻を集積する江戸末期の蔵をリノベーションした「麻倉Arts & Crafts」の2階に、自然物や身近な素材から生まれた北アルプスの精霊が並びます。

    作者の麻倉美術部は、大町市在住のアーティストや自由業、主婦などが集まったグループです。いかにも創作を楽しんでるという感じが伝わってきます。



    麻倉美術部《ひみつの森》


    子どもに大人気だった作品が、こちら。会場には水の回廊が設けられ、周りには山々、森、噴水、滝、船、水車、建物が並び、作品全体が架空の信濃大町になっています。

    川には様々な仕掛けも施されており、来場者は川に小さな船を浮かべて流す事ができます。

    会場では小さな子どもが何度も船を流して競争しており、自然と歓声が上がっていました。きっと、普通の芸術鑑賞だけでは得られない思い出が残るでしょう。



    原倫太郎+原游《ウォーターランド~小さな大町~》


    こちらは大町市在住の折り紙作家、布施知子による作品。パーツを組み合わせてつくる「ユニット折り」の第一人者です。

    今回の作品は、角柱をねじりながらコイル状に織り畳む「コイル折り」。のたうつ姿から大蛇を連想して命名されました。



    布施知子《OROCHI(大蛇)》


    最後にご紹介するのは、宮永愛子《風の架かるところ》。場所は若一王子神社境内にある大町護国神社で、薄暗い室内に、ひとすじの光が走っているような作品です。

    普段は木扉で閉じられている室内。天井には、昔から奉納されてきた沢山の絵馬が飾られています。静かに光る作品によって、空間に命が吹き込まれたかのようです。



    宮永愛子《風の架かるところ》。


    宮永愛子《風の架かるところ》。


    後半のレポートも動画をまとめました。ご覧ください。



    2日間の鑑賞体験でしたが、作品番号18の川俣正《源汲・林間テラス》と、作品番号21の平田五郎《水面の風景》は、周辺でクマの目撃情報が頻出したため公開が中止に(11/1から再開しています)。

    また、作品番号4のニコラ・ダロ《クリスタルハウス》も、たまたま訪問した日に機械が不調となり、鑑賞できませんでした(すでに復旧しています)。

    広大なフィールドが舞台という事もあり、予期せぬ出来事が無いとは言い切れませんが、それを差し引いても十分すぎる満足感。豊かな自然環境を活かした作品を見ると、決して東京の美術館では味わえない感動が味わえます。

    芸術祭の情報は公式Twitterで随時発信されていますので、訪問前のチェックをおすすめします。

    [ 取材・撮影・文:M.F. / 2021年10月30日~31日 ]


     → 北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その1)

     → 北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その2)


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    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00 
    ※一部鑑賞時間の異なる作品あり。
    電話 0261-85-0133
    公式サイト https://shinano-omachi.jp/
    料金
    一般 3,000円(2,000円)
    16~18歳 1,500円(1,000円)
    15歳以下 無料(無料)
    ※()内は前売り料金
    ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかの提示で、ご本人様のみ、一般1,000円、16〜18歳500円(当日、前売一律。15歳以下無料)で販売。この際の販売は北アルプス国際芸術祭運営本部(セントラルショップ)のみ。
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