「奥能登国際芸術祭2020+」のレポート第3弾。おすすめしたい作品は、まだまだ続きます。
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奥能登の食材を使った「スズ弁」(800円)は、ランチにピッタリ。いろいろなおかずの中で、のと豚を奥能登に古くから伝わる魚醤“いしる”で炒めた「のと豚のいしる焼」(かぼちゃの上)が特に美味でした。「道の駅すずなり」などで販売中。
思わず息を飲んだ強烈な作品がこちら。空き家となった民家に足を踏み入れると、無数の黒い蝶や蛾が、室内のあちこちにとまっています。
虫は黒い紙でできているので、もちろん動かないのですが、日本家屋の怪しげな雰囲気に、大量の黒い虫が加味され、相当なゾワゾワ感を覚えます。作者のカルロス・アモラレスは日本での知名度は高くないと思いますが、こういった作家と出会えるのは芸術祭の醍醐味です。
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カルロス・アモラレス〈メキシコ〉『黒い雲の家』 作品No.44/若山エリア/吉ケ池の空き家
海に面した製材所でのプロジェクトも、ぜひご紹介したい作品のひとつ。一見すると、テーブルや材木が置かれているだけですが、目線を下げると、なんとすべての天板がピッタリ同じ高さ! しかもその高さは、製材所の先に見える水平線と一致します。
この製材所は廃屋ではなく現役で稼働しており、芸術祭期間中は休業というリスクを負った上で、経営者と息子さんが参加を決めました。山と海が繋がっている事を暗示させるこの作品。森林の問題は日本のみならず、世界的な課題でもあります(※展示は10月24日で終了)。
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Noto Aemono Project〈日本〉『海をのぞむ製材所』 作品No.11/三崎エリア/新出製材所
塩を使ったインスタレーションで知られる山本基は、旧保育所で作品を発表しました。壁、廊下、天井は真っ青に塗装され、白いラインによる迷路のようなドローイングで埋め尽くされます。奥に進むと、塩でつくられた階段上の立体作品が現れます。
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山本基〈日本〉『記憶への回廊』 作品No.12/三崎エリア/旧小泊保育所
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山本基〈日本〉『記憶への回廊』 作品No.12/三崎エリア/旧小泊保育所
こちらも、前回の芸術祭で発表された作品。道路で断ち切られた線路跡に虹色の構造体が置かれ、先には双眼鏡があります。
覗いた先は、能登線の終点だった旧蛸島駅。作家からのメッセージ「Something Else is Possible」が掲げられています。夜間はメッセージがライトアップされます。
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トビアス・レーベルガー〈ドイツ〉『Something Else is Possible/なにか他にできる』 作品No.18/蛸島エリア/旧蛸島駅周辺
約30年前に廃業した銭湯、高砂湯で作品を展示しているのは、鉄のインスタレーションで知られる青木野枝。螺旋状に上に伸びる作品は、大気や水蒸気がモチーフです。
奥の浴場内に進むと、石鹸を使った作品も展示されていました。
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青木野枝〈日本〉『mesocyclone/蛸島 』 作品No.16/蛸島エリア/旧高砂湯
一番最後に見た作品も、強いインパクトがありました。かつて漁具倉庫だった薄暗い空間に登場する、巨大な赤い荒波。立体的に見えますが、手描きで絵が施された透明なフィルムを何層も重ね合わせてつくられています。
ぐるっとまわって見ると、さらに迫力が増加。平面とも立体ともいえる作品が、静謐な空間に緊張感を与えます。
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デイヴィッド・スプリグス〈イギリス/カナダ〉『第一波』 作品No.19/正院エリア/旧漁具倉庫
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デイヴィッド・スプリグス〈イギリス/カナダ〉『第一波』 作品No.19/正院エリア/旧漁具倉庫
第3回で紹介した作品も、動画にまとめました。
計3回のレポートで、雰囲気は伝わったでしょうか? すでに会期は最終盤ですが、期待を裏切らない芸術祭でした。全作品を見るには2泊3日がオススメですが、公式サイトには東京からの日帰りプランも紹介されています。
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2021年10月16日~18日 ]
→ 奥能登国際芸術祭2020+(レポート その1)
→ 奥能登国際芸術祭2020+(レポート その2)
→ 奥能登国際芸術祭2020+(レポート その3)
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