春夏秋冬の花が表現された日本美術(複製)と、アイドルグループ・乃木坂46。
メンバー一人ひとりを花に見立てた映像インスタレーションで、両者を重ね合わせて紹介する意欲的な展覧会が、東京国立博物館 表慶館で開催中です。
会場は東京国立博物館 表慶館
会場は、明治末期の洋風建築を代表する建物である表慶館。7つのエリアにそれぞれ現代的な構造体が設置されており、建物との対比も見どころとなります。
最初のエリアの日本美術は狩野長信筆《花下遊楽図屛風》、描かれた花は「桜」、表現のテーマは「日本美術の遠近表現」。
齋藤飛鳥(乃木坂46)のパフォーマンスはスリットカーテンと奥のスクリーンの2カ所に投影され、レイヤー状の不思議な感覚を覚えます。
「日本美術の遠近表現」 パフォーマー:齋藤飛鳥(乃木坂46)
奥に進むと、廊下状の構造体に作品と映像が対面する構成。日本美術は上村松園筆《焔》、花は「藤」、表現のテーマは「妖しい美」です。
衣装や髪の毛が美しく躍動する映像は、遠藤さくら(乃木坂46)。美人画で知られる上村松園が、嫉妬の化身となった生霊を描いた異色の作品を、パフォーマンスで表現しました。
「妖しい美」 パフォーマー:遠藤さくら(乃木坂46)
続いて、2枚の大型スクリーンの作品。日本美術は酒井抱一筆《夏秋草図屛風》、花は「百合と葛」、表現のテーマは「切り取られた瞬間」。
中央の《夏秋草図屛風》をはさんで、右側では久保史緒里(乃木坂46)が「雨」、左側では山下美月(乃木坂46)が「風」を表現します。ハイスピードカメラで撮影された映像で、瞬間を切り取ります。
「切り取られた瞬間」 パフォーマー:久保史緒里(乃木坂46)、山下美月(乃木坂46)
2階に進むと、金屛風の上部にスクリーンの構成。日本美術は俵屋宗雪筆《秋草図屛風》、花は「オミナエシ」、表現のテーマは「ループ構造」です。
生田絵梨花(乃木坂46)のループ性のあるパフォーマンスに、「秋草図屛風」のグラフィックが干渉していく映像です。
「ループ構造」 パフォーマー:生田絵梨花(乃木坂46)
続いて、5台の縦型ディスプレイが配置されたインスタレーション空間。日本美術は菱川師宣筆《見返り美人図》、花は「菊」、表現のテーマは「秘められた風景」です。
風景や水面などの抽象的な映像と、賀喜遥香(乃木坂46)のパフォーマンス。会場で最も印象深かったのがこの空間でした。
「秘められた風景」 パフォーマー:賀喜遥香(乃木坂46)
中央の吹き抜けを抜けて進むと、左手に屛風、右手に小さなディスプレイが林立する展示室に。日本美術は伝雪舟等楊筆《四季花鳥図屛風》、花は「椿」と「牡丹」、表現のテーマは「時間のジオラマ化」です。
裸眼で3D視できる特殊なディスプレイでは、ミニチュアのような立体視できる風景の中で、星野みなみ(乃木坂46)と与田祐希(乃木坂46)がパフォーマンスを行います。時間を閉じ込める、という意図です。
「時間のジオラマ化」 パフォーマー:星野みなみ(乃木坂46)、与田祐希(乃木坂46)
最後は大小さまざまなディスプレイが構造体の中にはめ込まれた構成。日本美術は《振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様》、花は「梅」、表現のテーマは「シュールなだまし絵」。
梅澤美波(乃木坂46)のパフォーマンスによる映像は、構造をまたいでつながっています。
「シュールなだまし絵」 パフォーマー:梅澤美波(乃木坂46)
会場の表慶館は、外部から光が差し込む開かれた空間。本記事の取材は午前中でしたが、夕方以降になると、また違った表情で楽しめると思います。
展示室内は撮影自由(写真のみ)です。空間も含めて雰囲気をお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年9月2日 ]