「ライゾマティクス_マルティプレックス」展 《Rhizome》2021
PerfumeやELEVENPLAY、狂言師・野村萬斎らとのコラボレーションで耳にした方も多いのではないでしょうか。人とテクノロジーの関係からクリエイティブな体験を手掛けている、日本のメディアアート集団“ライゾマティクス”。彼らの結成15年を記念する展覧会がはじまりました。
《Rhizomatiks×ELEVENPLAY“multiplex”》2021
多岐にわたるライゾマティクスのプロジェクト。ステージデザインなどのエンターテインメントの他にも、科学者との研究開発のリサーチや、そこでの膨大なデータを私たちに伝わる様に視覚デザインしていく事などがあります。
会場の1つ目の展示《Rhizomatiks Chronicle》は、これまでの活動をスクリーンで振り返る年表。600もの膨大なプロジェクトをファイルで書き込み、自動的に紹介した圧巻の映像作品です。
《Rhizomatiks×ELEVENPLAY“multiplex”》2021 左が実際にパフォーマンスを行ったステージ、右が完成された映像
《Rhizomatiks×ELEVENPLAY“multiplex”》で展示しているのは、演出振付家MIKIKO率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」のダンサーの動きをデータ化したもの。手前にはダンサーがステージで踊っている映像作品、奥にはパフォーマンスを行うためのステージがあります。
《Rhizomatiks×ELEVENPLAY“multiplex”》の完成された映像
ロボティクスやカメラだけがリアルタイムで動いているステージと、ダンサーの映像を合成したものをプロジェクションするという、リアルな表現をバーチャルな空間へ展開した作品です。2つを行き来することで、よりインスタレーションの面白さを体感することができます。
《Rhizomatiks×ELEVENPLAY“multiplex”》2021 パフォーマンスを行うステージ
現在開発中の未完成の作品も展示中です。中庭の広場には、GPSで衛生を使い自動走行するロボティクスが。太陽光で充電するため、完全に自立で動き続けるプロトタイプを見ることができます。
《RTK Laser Robotics Experiment》2021
過去に制作された国内外でのコラボレーションやクライアントワークの作品表現を展示したスペースもあります。スポットライトやジンバルカメラも搭載できるドローン、プログラムから狙った場所に発射できるおもちゃのエアガンなど、どんなプロセスで制作したかを知ることができます。
《Phizomatiks Archive&Behind the scene》2006-2021部分
《Phizomatiks Archive&Behind the scene》2006-2021部分 プリント基板・プロトタイプ・治具
服自体が信号を発し、空間の距離を計測するecho ware。背中の配線が10m先の物体を察知し、振動を伝えます。光から情報を受け取る“目”とは異なる新たな「みる」体験ができる衣装です。
echo ware 2017 echoプロジェクト
今回の展覧会に合わせ、アップデートした作品もあります。八の字構造のレールの上をLEDが内蔵されたボールが流れ落ちる《particles 2021》は2011年に発表したもの。新たに、全てのボールの位置情報を把握できるようにし、外からレーザーを発光しているため、より幻影的な残像を作り出すライトインスタレーションとなりました。
《particles 2021》2021
来場者の方が作品に参加することができるのも展覧会の見どころ。実験デバイスを身に着け鑑賞を行うと、位置や動きのスピードのデータを取得。データは、個人が判別できない形で作品に反映され、作品の一部になります。
実験デバイス (※参加希望の方は予約優先チケットにてデバイス付入場券を購入)
一見、アートとして捉えにくい作品が並ぶ今回の展覧会。しかし、どういったものが新生のアートとして評価されるのか、新しさとは何か、ライゾマティクスの作品を通してアーティストの新しい形を楽しむ展覧会になっていると感じられます。
また、ライゾマティクス展はオンラインでの会場も設置されます。会場へ訪れることが難しい方も、こちらにてライゾマティクスの魅力を味わってみてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2021年3月19日 ]