4月25日(土)に開幕する予定だった本展。新型コロナの影響でかなり遅れましたが、ようやくスタートする事になりました。
展覧会は江戸時代の個性的な絵師を紹介する企画。「京」「大坂」「江戸」そして「諸国」の4章構成で、広く日本各地から絵師を集めているのが特徴といえます。
ここでは、あまり名前が知られていない絵師を中心にご紹介したいと思います。
京の絵師は俵屋宗達、尾形光琳、伊藤若冲、円山応挙とビッグネームが続きますが、祇園井特(ぎおんせいとく)は伝記がほとんど知られていない謎の絵師。女性の描き方が濃厚で、独特のデロリ感は、一度見たら忘れられないインパクトがあります。
狩野永岳(かのうえいがく)は狩野山楽、山雪と続く京狩野の9代。27歳で家督を継ぎ、他の流派の画風も取り入れながら、独自の画風を確立。公家、有力大名、寺社、豪商とパトロンを広げ、低迷していた京狩野を再興させました。
大坂の耳鳥斎は「にちょうさい」と読みます。鳥羽絵といわれる狂画の名手で、脱力感に満ちたゆるい作品が並びます。
同じ大坂の墨江武禅(すみのえぶぜん)は、山水画の名手。西洋風の陰影表現を用いた作品も描いています。
江戸の加藤信清(かとうのぶきよ)は、驚愕の絵師。一見すると何という事もない仏画ですが、なんと画面全体が経文の文字で埋め尽くされています。経文で仏画を描けば写経の徳を兼ねることができると考えて、制作されたもの。単眼鏡、必須です。
狩野(逸見)一信(かのう(へんみ)かずのぶ)は、2011年に東京都江戸東京博物館で「五百羅漢」展が開かれました。増上寺に寄進された五百羅漢図は、ねっとりとした描写が特徴です。
蠣崎波響(かきざきはきょう)は松前の絵師。アイヌの指導者を描いたのが《夷酋列像図》(いしゅうれつぞうず)です。陰影をはらんだ表現と鮮やかな色彩によって、精緻な人物像になっています。
絵師の金蔵、略して絵金(えきん)。土佐で絵師として活躍するも、贋作事件に巻き込まれて追放。町絵師となった後に血みどろの芝居絵屛風を盛んに描き、人気を博しました。
コロナの影響で作品の移動が困難になったため、残念ながら浦上玉堂と神田等謙はパネルによる紹介になりましたが、それでも33人。個性がぶつかりあう展覧会です。
江戸博での展覧会はわずか3週間になってしまいましたが、開幕を迎えられた事を喜びたいと思います。東京展の後、山口、大阪に巡回する予定です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月1日 ]