日本の鉄道開業は、ご存知のとおり新橋~横浜間で、明治5年(1872年)のこと。東京の市内交通の近代化は、当初は民間会社が主導して進められましたが、日露戦争による経営悪化で運賃が値上げされたことなどから、公営交通による電車運営を望む声が高まります。時代の要請を受けるかたちで、路面電車事業と電気供給事業を民間より買い受け、明治44年に東京市電気局が開業しました。
展示会場。旧東京市営バス(円太郎バス)の実車も展示されました。その後、東京市電は順調に路線網を拡大し、満員電車が東京の代名詞となるほどになりました。その頃に活躍していた車両が、旧東京市電「ヨヘロ1形」です。会場ではヨヘロ1形の実物大モックアップが展示されており、乗車して当時の雰囲気を確かめることができます。
驚くべきことに、このヨヘロ1形は現在も函館市企業局で除雪車両(ササラ電車)として活躍しています。昭和9年(1934年)に函館に譲渡され、今回の展示のために、実に76年ぶりに東京に里帰りしました。
展示会場。数々の実物展示。昭和20年(1945年)の空襲で、東京は焼け野原に。市電やバスも多くの損失を受けましたが、戦後、東京の街とともに復興していき、昭和30年(1955年)には、全長213kmの路線を誇る都電黄金期を迎えることとなりました。会場には当事の広告入りの系統板などの鉄道実物資料が展示され、チンチン電車が東京を走りまわっていた時代を振り返ります。その時代の代表的な車両が、都電6000形。前述のササラ電車(旧ヨヘロ1形)とともに、屋外スペースで展示されています。
都バスのマスコットキャラクター「みんくる」も来てました。構造上、派手な動きは苦手?高度経済成長期を迎えて都電もその影響を受けるようになり、都電荒川線にあたる区間を残して、全ての都電は昭和47年(1972年)までに撤退しました。その後、初の都営地下鉄として、昭和35年(1960年)に浅草橋-押上間の営業を開始(現:都営浅草線)。この路線は京成電鉄と京浜急行電鉄との相互乗り入れがなされ、日本初の郊外鉄道と相互乗り入れした地下鉄となりました。続いて都営三田線、都営新宿線、都営大江戸線と交通ネットワークが拡充されてきました。私の記憶にあるのは、このあたりの展示。都営新宿線の開業PRポスター、各種の記念切符などが展示されています。
100年に及ぶ歴史を振り返る展示なので、幅広い世代の方が楽しめる企画です。筋金入りの鉄道マニアから、夏休みの自由研究まで。鉄道ファンはお見逃しの無いように。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年7月13日 ]