いわむらかずお氏は小学校時代を雑木林のある東京・杉並で過ごし、東京藝術大学美術学部工芸科に進学。1964(昭和39)年に卒業後、化粧品会社にデザイナーとして勤務しましたが、2年半ほどで退社。学生時代から係わっていたテレビの幼児番組の絵を描く仕事に専念するうちに、同氏の関心は次第にテレビから絵本へと移ってゆきました。
1970(昭和45)年、最初の絵本「ぷくぷくのえほん」を出版し絵本作家としてデビュー。以後、多くの自作絵本を発表し、数々の賞を受賞。現在、それらの作品はヨーロッパ、アメリカ、アジア等16ヶ国語に翻訳出版され日本と世界の子どもたちに親しまれています。
子どもの頃の原風景・雑木林での活動を目指して栃木県益子町に転居後も、里山の自然とそこに生きる生き物たちを主人公に、「14ひき」、「トガリ山のぼうけん」、「かんがえるカエルくん」、「ゆうひの丘のなかま」等のシリーズを次々に発表するかたわら、「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館するなど活発な活動を展開、同氏のやさしいまなざしと繊細な筆致が描きだすほのぼのとしたぬくもりの世界は見るものの心にあたたかい灯をともし続けています。
今回の展覧会は、「いわむらかずお絵本の丘美術館」(栃木県那珂川町)のご協力のもと、1970年代から90年代にかけてのいわむらかずお氏の創作の軌跡をたどるとともに、人気シリーズの絵本原画や関係諸資料を展示・紹介するものです。
絵本作家としてのみならず里山の自然をこよなく愛する自然観察者として、美術館活動や環境教育活動にも貢献を続けるいわむらかずお氏の豊かでユニークな世界を訪れていただく機会となれば幸いです。