清朝末期から中華民国初期に活躍した呉昌碩(ごしょうせき)(1844~1927)は、書画篆刻(てんこく)の芸術に偉大な業績を遺しました。中国では18世紀後半以降、古代の金属器や石刻など、金石(きんせき)の銘文(めいぶん)を制作の拠りどころとする碑学派(ひがくは)や金石画派が興ります。呉昌碩もまた奥深い金石の研究に没頭しました。とりわけ「石鼓文(せっこぶん)」の臨書(りんしょ)は、呉昌碩の芸術を「金石の気」に満ちた素朴で重厚なものへと昇華させます。
呉昌碩は安吉(あんきつ)(浙江(せっこう)省)の知識人の家系に生まれました。太平天国の乱(たいへいてんごくらん)(1851~64)により、苦難の生活を強いられたものの、学問への志を絶やさず、杭州(こうしゅう)(浙江省)、蘇州(そしゅう)(江蘇(こうそ)省)、上海へと活動の場を広げます。各地で金石を介して師友と親交を深め、研鑽を積んだ呉昌碩は、後年、上海芸術界の中心人物となり、日本にも多大な影響を与えました。
令和6年(2024)は呉昌碩の生誕180年にあたります。本展はこれを記念し、呉昌碩の芸術活動に焦点をあてます。
第1部「呉昌碩前夜」では、金石を尊重した先学や、呉昌碩に先行する上海の芸術家たちの作品をご覧いただきます。第2部「呉昌碩の書・画・印」は、呉昌碩の書画や印譜(いんぷ)を概観し、作風の変遷をたどります。第3部「呉昌碩の交遊」では、師友や弟子の作品に注目します。本展を通して、「金石の交わり」のなかで築かれた呉昌碩の世界をご堪能いただけますと幸いです。
○前期=2024年1月2日~2024年2月12日
●後期=2024年2月14日~2024年3月17日