広島市現代美術館は2020年末より23年3月にかけて、改修工事のための長期休館に入り、2023年3月18日にリニューアルオープンを迎えました。
この休館期間中、私たちは、アーティストや美術関係者にとどまらず、近隣の方々や団体、施設の協力を得ながら、館外のスペースやSNSをはじめとした様々な場所や媒体の利用を通して、開館時とは異なる活動の場やあり方を模索し、新たな展開の可能性を探ってきました。
本展では、それらの活動の中から、休館中の活動拠点「鶴見分室101」、工事現場の仮囲いを活用したプロジェクト、収蔵作品を題材とした漫画連載「美術は静かに無題さんに語りかける。」、SNSによる投稿「#ゲンビの工事日記」といった、長期にわたる試みを振り返ります。また、そうした拠点や展示に関連したイベントやワークショップなどを展覧会会期中に随時実施し、休館中に開催したイベント、開催したかったが実現しなかったイベントを展開していく場を作り出していきます。
なお、本展のタイトル「再現場」は本来、開催を予定しながらも中止となった展覧会のためのものとして、出品予定だったアーティスト・グループ、ヒスロムより提起されたものです。ところがそれは、ひとつのプロジェクトにとどまらず、休館中の試みを経て活動を再開させた館全体について言い当てる言葉でもありました。長期休館を経て、展示室という私たちにとって馴染み深い現場が戻ってきたこと。また、それと同時に、美術館という場がそれ以外の場所で立ち上げられた活動や創作をいきいきと再演させる、再現の場にもなりえること。こうした、シンプルでありながらも、重要な指摘を含み持つ言葉を頼りに、美術館のこれからについて考える試みとします。