京の都に息づく王朝美から花開いた琳派の芸術。その優雅な造形と装飾性を特徴とする芸術は、始祖と仰がれる本阿弥光悦(1558 - 1637)や俵屋宗達(? - 1640頃)、後代の尾形光琳(1658 - 1716)、江戸の酒井抱一(1761 - 1828)へと、直接的な師弟関係ではない私淑によって受け継がれました。
先達の美に憧れ、模倣を介することで継承される琳派ですが、その伝統は必ずしも絵画作品に限ったものではありません。琳派という潮流によって継承される模様や造形性、作品の主題となっているイメージは、やきものや蒔絵といった工芸作品とも互いに影響しあうことで創意を生み、発展してきたのです。
本展覧会では、江戸時代中期を代表する京の陶工・尾形乾山(深省)(1663 - 1743)をはじめとして、継承されゆく「琳派のやきもの」の世界をご紹介します。
高級呉服商・雁金屋の三男として生まれた乾山は、その恵まれた環境にあって、京文化の粋を知り尽くした高い芸術的教養をもつ人物でした。彼の興した乾山焼は、和歌や能、漢詩といった文芸を主題とした独自のやきものとして、絵画や書の美と融和する新たな陶芸の世界を開拓しました。日本の陶磁史においては革命的な出来事であり、後の時代に多大な影響を与えたと評されます。
雅やかな模様や造形の世界が作品のジャンルや時代をこえて響きあう、琳派芸術の美の共演をお楽しみください。