1963年に和歌山城内で開館した和歌山県立美術館を前身とする当館は、日本で5番目となる国公立の近代美術館として、1970年11月、県民文化会館の1階に開館しました。そこで23年あまり活動したのち1994年に現在の建物へと移転し、展示収蔵環境を拡充させミュージアムとしての活動を続けています。和歌山ゆかりの作家についての展覧会と収集を中心に、現在はその範囲を国外にまで広げ、日本画、洋画、彫刻、版画など、総数1万点を超える作品を収蔵するに至っています。
コレクション展では、所蔵品を通じて幅広い美術の表現に接していただけるよう、季節ごとに展示を替え、さまざまな特集コーナーを設けながら作品の紹介を続けています。今回の特集では、和歌山県立近代美術館が開館した1970年前後に制作され、当館に結集したコレクションで、その現代美術の現場を「再見」します。
1960年から1980年代にかけて、京都や兵庫、そして和歌山をはじめとする関西の「近代美術館」で、数多くの現代美術展が開かれました。これらの展覧会に出品された作品群は、当時の果敢な美術家たちによって生み出され、従来の表現の枠を超える新たな地平を切り開くものでした。しかしここには、すでに戦前から「前衛」活動を展開していた作家たちが加わっていたことも見逃せません。
また、同時代美術は、その宿命として、当時まだ理解されることもなく、今日ほど評価されていたわけではありません。若い作家たちが競うように出品していた美術館の展覧会会場も来館者は少なく、批判を超えなければならない時代でもあったのです。
それから半世紀近くを経て、ようやくかつての作品が生み出された時代が再考できるようになりました。和歌山県立近代美術館は、1983年から「関西の美術家シリーズ」展を開催し、関西の最前線の動向を紹介して、いち早くこれらの作家たちの作品収集にも着手していたのです。そこで今回の特集展示では、「⒈ 戦前の『前衛』からの持続」「⒉ 『近代美術館』の誕生と『現代美術』の動向」「⒊ 1970年代の新たな展開」「⒋ 1980年代への持続」の4章構成で「再見」するとともに、当館所蔵の戦前の「前衛」作品もあわせて紹介します。