《『神曲』4 アニョロ・ブルネレスキを襲う六本足の蛇》
ダンテ『神曲』地獄篇第25歌の一場面。ローマの古代詩人ウェルギリウスに導かれ地獄と煉獄、天国を遍歴するダンテは、6本足の蛇に姿を変えた盗賊チアンファ・デ・ドナーティが仲間のアニョロ・ブルネレスキに絡みつき、咬みつき、二体が溶け合うように蛇とも人間ともつかぬ異形のものへと変身する様を目撃する。画面の右側で怖れながら見ている二人の盗賊にも、火を吐く蛇が向かう。この後、咬みつかれた一人は蛇に、咬みついた蛇は人間へと変身する。画面の左端にダンテ、その背後にウェルギリウス。ブレイクは友人の画家ジョン・リネルの依頼で『神曲』の挿図を描き、100点超の素描と7点の版画を残したが、刊行未完のまま世を去った。
担当者からのコメント
眉毛や鼻毛、脚や鰭をもつ蛇たちがユーモラス。ラテン語の「這う」を語源とするSerpent(蛇)はしばしば英語で蜥蜴や竜と混用されるそうですが、ブレイクは敢えてこれを表現したのでしょうか。
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