《兎》 高村光太郎 1899年頃
高村光太郎の父は、仏師としても活躍した高村光雲。鷲の羽根を握りしめて空をにらむ《老猿》(1893年、東京国立博物館蔵)が最も有名です。光太郎は、1910年代に日本に紹介された彫刻家ロダンのスタイルを吸収しながら独自の表現を生み出していきますが、この《兎》はそれよりも前、彫刻という西洋由来の概念が浸透しつつあった時期の作品です。小品ながら、体を少しひねったポーズをとることでしなやかな動きを感じさせるとともに、耳からつま先に至るまで、毛並みも精緻に刻み込まれているところに、父・光雲から学んだ技術が光ります。