《十二支歌仙歌合色紙帖》 紙本銀地着色、江戸時代前期(17 世紀)、慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)
擬人化された十二支の動物たちが左右にわかれ、歌合をしています。このような趣向は、「十二類絵巻」なども知られますが、本作品のように、『天神十二時詠』を歌合の形式で取り上げたものは、他に類例がありません。
二番の歌合は、左寅、右卯。寅は、「’とら’ば手にたまりもやせぬ 秋の夜の 草葉の露に やどる月影」、卯は「’う’き事の 夢に成行 世なりせば 我いにしへを おもひ合せん」というように、十二支を歌に詠み込んでいます。この歌は、天神(菅原道真)が、干支の「十二時」に、一首ずつ読んだと伝承される『天神十二時詠』とほぼ一致しています。
担当者からのコメント
虎は束帯姿で笏を持ち、垂纓冠を被り、見事に歌仙に扮するかに見えますが、よく見ると、赤い舌がぺろりと出て、本性を隠しきれていないのが可愛らしいポイントです。KeMCo新春展2022「虎の棲む空き地」(会期:2022年1月11日(火)〜2月10日(木))で展示されるので、ぜひ虎の集まる慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)に見にいらしてください。