約270点の資料で89のプロジェクトを紹介する、過去最大規模の安藤忠雄展。全6セクションで安藤建築の全貌に迫ります。
会場は、安藤が独学時代に世界を旅した際のスケッチから。安藤は設計活動を始める前から海外を放浪しており、その体験が自身の建築観に繋がっていきました。
会場にはアトリエの再現も。元プロボクサーという異色の経歴を持つ安藤、壁にはボクシンググローブが掛かっています。
安藤忠雄の原点といえるのが、住宅。狭小敷地の「住吉の長屋」、急斜面につくられた「六甲の集合住宅」と、建築上の厳しい条件と課題に向き合いつつ、安藤ならではの個性的な住宅がつくられていきました。
会場には実質的なデビュー作「都市ゲリラ住居」から、進行中の「マンハッタンのペントハウスⅢ」まで、住宅の代表作品が一堂に会します。
セクション1:原点/住まい本展最大の見どころといえるのが、屋外展示場に原寸大で再現された「光の教会」。一般的な建築の展覧会では、展示されるのはスケッチ/模型/写真や映像。体感できる原寸大の作品が設けられるのは、極めて珍しい試みです。
「光の教会」は、大阪・茨木市の住宅地にある小規模な教会。約30年前の作品です(1989年竣工)。正面にある十字状のスリットからの光が、礼拝堂をシンボリックに表現。装飾を排し、精神性が強調されています。
原寸大で再現された「光の教会」大きな展示室に進むと、建築模型がずらり。「表参道ヒルズ」「東急東横線 渋谷駅」「上海保利大劇院」など近年手掛けた大規模な施設のほか、パリで進行中の最新作「ブルス・トゥ・ゴメルス」、さらに実現しなかったプロジェクトも含めて、主要作品が並びます。
中央には「直島プロジェクト」の空間インスタレーション。自然が失われていた瀬戸内海の小さな島・直島(香川県)が、1980年代末から30年余をかけて、風景と建築が一体化したアートの島になりました。現在では海外からも熱いまなざしを向けられています。
「
日本、家の列島」(パナソニック 汐留ミュージアム)、「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」(東京国立近代美術館)、「建築の日本展」(森美術館、2018年4月開催)と、建築好きにはたまらない展覧会が続く中、大本命といえる企画展です。
会期が残り少なくなってしまいました。お早目にどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年9月26日 ] | | 連戦連敗
安藤忠雄(著) 東京大学出版会 ¥ 2,592 |
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