京都編と、4月16日から始まる東京編で構成される「日本画の教科書」。京都編で冒頭に展示されている重要文化財の竹内栖鳳《班猫》は、山種美術館のアイコンといえる人気者です。
動物画の名手で、匂いまで描くといわれた栖鳳。モデルになった猫は、栖鳳が沼津に滞在していた時に、八百屋の店先で見つけた猫。その姿に、中国南宋時代の徽宗皇帝の描いた猫を想い、譲り受けて京都に持ち帰りました。
近寄って見ると、印象的な毛並みと目には金泥が使われている事が分かります。このポーズを取らせるために、背中に蜂蜜を塗ったというエピソードも伝わります。
重要文化財 竹内栖鳳《班猫》「京都画壇の名品」ですので、もちろん村上華岳の《裸婦図》も登場。こちらも重要文化財です。
「裸婦」ではありますが、官能的というよりも、慈愛に満ちた宗教性のほうが強く表れているように思えます。華岳自身も「私はその眼に観音や観自在菩薩の清浄さを表わそうと努めると同時に、乳房のふくらみにも同じ清浄さをもたせたいと願った」と語っています。
先ほどの《班猫》もですが、山種美術館の展示はかなり作品に近寄って見ることができる事も特徴的。細部までじっくりとお楽しみください。
村上華岳《裸婦図》大家は多いのですが、どうしても東京と比べると存在感が薄い京都画壇の中で、特別な存在といえるのが上村松園。女性として初めて文化勲章を受章した松園は、美人画の名手として知られて、「一点の卑俗なところもない」女性像を描きました。
会場には松園の子で同じく文化勲章を受章した上村松篁、松園の孫で文化功労者の上村淳之の作品も展示。親・子・孫と、三代続いて日本芸術院会員です。
上村松園・松篁・淳之の作品次回展は4月16日から開催される「東京編」。横山大観、川合玉堂、菱田春草、安田靫彦、前田青邨、奥村土牛、東山魁夷らの作品が展示される予定です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年12月12日 ]※掲載の作品はすべて山種美術館所蔵
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