愛らしい聖母子、ギリシャ神話の悲劇…直感的に訴えてくる西洋美術に比べ、日本美術はどことなく地味。年齢を重ねないと理解できない、と思っている方がいるかもしれません。
初心者を遠ざけているのが、その用語。確かに「溌墨」「外暈」「繧繝彩色」などは、ある程度日本美術を見ている方でも、そもそも文字すら読めないもしれません(それぞれ「はつぼく」「そとぐま」「うんげんざいしき」)です。
今回は、その難解な用語を解説してくれる有り難い企画。全部で9つの絵画の用語が紹介されています。ここではうち3つをご紹介しましょう。
会場
まずは「たらしこみ」、これはご存じの方も多いと思います。墨や絵の具が乾かないうちに、別の墨や色を加える事によって、意図的に滲ませる技法です。
俵屋宗達による創案といわれ、琳派の証のような技法。会場で紹介されている屏風は伝・立林何帛と、喜多川相説による作ですが、ともに琳派の絵師です。
「たらしこみ」
次いで「付立て(つけたて)」。日本画は輪郭線を描くのが特徴のひとつですが、この手法は輪郭を用いず、筆の穂の側面を使い、ひと筆で描くやり方。筆に含まれる墨や色の濃淡で、陰影や立体感を表します。
これは、応挙から連なる円山派と、その流れを汲む四条派の得意技。展示されている長沢蘆雪は応挙の弟子、松村景文は四条派の絵師です。葉などが「付立て」で描かれています。
「付立て(つけたて)」
「截金(きりかね)」は、金箔や銀箔を、細い線や三角・四角・菱形などに切り、絵画や彫刻に貼り付ける技法。光を反射するため、仏の着衣や光線など仏画でよく使われます。
細かな模様を切った金属箔で表現するのは、まさに手先が器用な日本人ならではといえます。
「截金(きりかね)」
専門用語を知る事で、より深い美術鑑賞が可能に。デートで知識を披露すれば、あなたの株も上がるかもしれません。その他の技法は「溌墨(はつぼく)」「外暈」「金雲(きんうん)」「白描(はくびょう)」「裏箔(うらはく)」「繧繝彩色(うんげんざいしき)」、会場でお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月22日 ]
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