会場は本編に入る前に、風俗画の起源といえる古代ギリシャやオリエントの作品から。続いて歴史画や肖像画など別ジャンルの絵画も紹介し、絵画のヒエラルキー(序列)について解説します。
1章の「労働と人々 ─ 商人、働く人々、農民」から、本格的な風俗画の紹介となります。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョの《物乞いの少年(蚤をとる少年)》は、ルーヴル美術館に最初に入ったスペイン絵画のひとつ。少年の身なりは粗末ですが、気高さも感じられる描写です。
プロローグから、1章「労働と人々 ─ 商人、働く人々、農民」話題のフェルメール《天文学者》は、2章「日常生活の寓意 ─ 風俗描写を超えて」で展示。日本初登場となります。
ユダヤ系の銀行家一族のロートシルド(ロスチャイルド)家旧蔵だったものをナチス・ドイツが略奪したといういわくつきの名画で、ルーヴル美術館に2点しか無いフェルメール作品のひとつです。
「日本の上着」と呼ばれた衣裳を羽織った学者は、当時の知識人に流行していた長髪。中央の人物がややぼんやりしているのに対し、天球儀の方はビチッと描きこまれています。モデルが誰なのか? 同じような構図の《地理学者》との関係は? 議論がつきない作品です。
2章「日常生活の寓意 ─ 風俗描写を超えて」3章「雅なる情景 ─ 日常生活における恋愛遊戯」では男女の恋愛を描いた作品として、ヴァトーやデ・ホーホら。4章「田園の風景 ─ 日常生活における自然」には狩猟を描くカラッチや、農村を詩情豊かに描いたコローやトロワイヨンらの作品が紹介されます。
3章「雅なる情景 ─ 日常生活における恋愛遊戯」、4章「田園の風景 ─ 日常生活における自然」5章は「室内の女性 ─ 日常生活における女性」。私的な空間の女性に関わらず、不自然に露出が多い作品も。画家・鑑賞者ともに男性目線で、窃視的な願望に応えています。
《風呂からあがるムーア人の女性》、または《ハーレムの室内》も、極めて官能的。オリエンタリズムあふれる題材を得意にしたシャセリオーならではの作品です。
5章「室内の女性 ─ 日常生活における女性」最後の6章は「アトリエの芸術家」。画家たちがアトリエの芸術家を描いた作品です。
猿が絵を描く姿は、シャルダンの作品。古典を重視するあまり写生を疎かにしがちな美術アカデミーを風刺しているとも言われています。
6章「アトリエの芸術家」「風俗画」という枠組みで各国・各時代を代表する作品が集まるのは、さすがルーヴル美術館ならでは。西洋美術好きにはたまらない豪華なラインナップをお楽しみください。
なお本展を主催する日本テレビは、ルーヴル美術館と長期的な展望にたった新たな協力関係を築くことに合意。本展はそれに先立って行われるもので、2018年から4年に1度、計5回にわたって日本で大規模な「ルーヴル美術館展」が開催される事となります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月20日 ]■ルーヴル美術館展 に関するツイート