ピーター・ドイグ《夜の水浴者たち》 2019年 作家蔵
【当面の間、臨時休館】
日本初となるピーター・ドイグ展の開幕です。
ドイグは「画家の中の画家」と評され、今日世界でもっとも重要なアーティストの1人です。
(左から)ピーター・ドイグ《エコー湖》 1998年 テート蔵 / ピーター・ドイグ《カヌー湖》 1997~98年 ヤゲオ財団コレクション、台湾蔵
「ロマンティックかつミステリアスな風景を描く画家」。展覧会チラシの一文に魅かれます。
どんな世界を見せてくれるのか、早速会場へ入ってみましょう。
(左から)ピーター・ドイグ《赤い男(カリプソを歌う)》 2017年 マルグリット・スティード・ホフマン蔵 / ピーター・ドイグ《水浴者(カリプソを歌う)》 2019年 作家およびマイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク / ロンドン
作品からは、ふんわりした空気と不安にさせる空気が醸し出されています。
知らない場所が描かれているのに、懐かしくも感じるのは色彩のせい……?
画面の中の風景は、特定の場所で写生したものではありません。
彼は住んでいた場所(国)や広告、映画、写真、またはマティスやゴーギャン、ムンクなど近代絵画の構図やモチーフなど多重なイメージを組み合わせ、作品を制作するといいます。
鑑賞する私たちは作品の中にある何かにひっかかり、結びつき、揺らされ、自分の中で新たにイメージを膨ませながら彼の作品に漂うことになるのです。
知らぬ間にかぶりつくように作品に近づいていました。
絵具が厚く塗られた部分と薄い部分の差、チューブからこぼれ落ちたのかと思えるほどボタッとのせられた色、砂糖や塩の結晶のような質感(《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》の作品解説より)など、キャンバス上が不思議で面白い。
子供がおもちゃを見つけた時のようにのめり込んでしまいます。
(左から)ピーター・ドイグ《のまれる》 1990年 ヤゲオ財団コレクション、台湾蔵 / ピーター・ドイグ《天の川》 1989~90年 作家蔵
しかし、ふと遠くに見えた“大きな沼”に私は動けなくなりました。
代表作《のまれる》です。1枚の平たい絵画ではなく、様々な糸や技法で織られた毛並みのある絨毯のように見えます。
「きれい。」そうつぶやいたと同時に、形を表すためだけに塗られたのではない絵具の役割に気づかされ、稲妻に打たれたようにその場に立ちすくんでしまいました。
その衝撃はゆっくりと変化しはじめます。実物を見ることができる嬉しさ、知る楽しさ、そして絵画の奥深さに包まれていくのでした。
プレビューに参加したピータ・ードイグ氏
ピータ・ードイグ《ストレンジャー・ザン・パラダイス》(「スタジオフィルムクラブ」より) 2011年 マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク / ロンドン / ピーター・ドイグ《赤いトタン屋根の猫》(「スタジオフィルムクラブ」より) 2011年 作家蔵
写真では決して伝わらない魅力をぜひ会場で味わってください。
近寄ったり遠くで眺めたり。
時間をかけてじっくりとピーター・ドイグの世界にのまれてみてはいかがでしょうか。
会場 | 東京国立近代美術館 |
開催期間 | 2020年2月26日(水)~2020年6月14日(日)※2/29~3/15は臨時休館。最新情報は展覧会公式サイトへ |
休館日 | 月曜日(ただし3月30日、 5月4日は開館)、 5月7日(木) |
開館時間 | 10:00~17:00(金曜・土曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで) |
所在地 | 東京都千代田区北の丸公園3-1 |
03-5777-8600(ハローダイヤル) |
HP : https://peterdoig-2020.jp |
料金 | 一般 1,700円、大学生 1,100円、高校生 600円 (3月24日~4月5日は高校生・大学生無料(入館時に学生証の提示が必要) |
展覧会詳細へ |
「ピーター・ドイグ展」 詳細情報 |
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カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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