トーベは1914年に、スウェーデン語系フィンランド人の彫刻家の父・ヴィクトルと、スウェーデン人の挿絵画家の母・シグネのもとに、三人姉弟の長女としてヘルシンキで生まれました。下の弟二人も、写真家、小説家・漫画家として活躍と、ヤンソン家は超芸術一家です。
本展では、絵本の挿絵や原画のスケッチなど約500点の作品を、フィンランド・タンペレ市にあるムーミン美術館と、ムーミンキャラクターズ社が所蔵するコレクションから紹介。挿絵以外にも、グッズやフィギュアなど、多彩な表情のムーミンと、そのなかまたちも展示されています。
ムーミンの誕生には、二つの起源があると言われています。一つは、トーベがスウェーデン留学中に、叔父・エイナルから聞いた、首筋に冷たい息を吹きかける「ムーミントロール」というおばけの話。もう一つは、弟のペル・ウロフとのけんかによって生み出された、怒った顔の大きな鼻の生きもの「スノーク」です。
鼻の大きな生きものが心に残ったようで、トーベが画家を志した20代の頃には、「スノーク」とよく似た生きものを、作品に描いていました。
トーベがムーミン小説を手掛ける前に描いていた、スウェーデン語系の風刺雑誌「ガルム」の挿絵は、本展のみどころの一つです。
第二次世界大戦が開戦した1939年。フィンランドもソ連の侵攻により、否応なしに戦争へ巻き込まれていきました。戦争を嫌ったトーベは、風刺雑誌「ガルム」に、独裁者たちを痛烈に笑いとばす風刺画を描いていました。その風刺画の中には、ムーミンに似た生物が描かれています。
日本で初めてムーミンが紹介されたのは1964年でした。1990年には、トーベと弟のラルスが全編を監修した、ムーミンアニメが放送され、日本にもムーミンブームが到来。このブームは、今もなお続いています。
テレビアニメの宣伝のために、1971年と1990年の2回と来日を果たしたトーベ。日本でのスケッチや写真資料も展示されています。浮世絵とムーミンを並べるユニークな展示も。並べてみると、ムーミンと浮世絵は似ているかも? 見比べてみてください。
「ムーミン谷の冬」のスウェーデン語版初版より、一部抜粋・縮小して綴じ込みとして収録されている、公式図録もおすすめ。会場最後の特設ショップで限定販売されています。そのほかの展覧会限定グッズのお買い物も、お忘れなく。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年4月8日 ]