特別展「東福寺」 会場風景
秋本番の京都、京都国立博物館で10/7から12/3まで、特別展「東福寺」が開かれています。 東福寺と言えば、その壮大な伽藍と燃えるような紅葉の美しさでその名をとどろかせています。
京都国立博物館での特別展「東福寺」は、3/7~5/7までの東京展に続く展覧会となります。とはいえ、東福寺は、京都国立博物館からも徒歩圏内の地元です。地元ならではの展覧会として、東京展より約30件多く、また、東京展では展示されなかったものも約50件展示されていますから、必見です。
東福寺は京都を代表する禅宗の大寺院
今回の展覧会は、禅宗美術の中心、東福寺初の大規模展覧会と言えます。東福寺の「東」は東大寺に、「福」は興福寺に由来するそうです。東福寺と言えば、京都東山にそびえる巨大伽藍のスケールに圧倒されますが、その大きさを体感できます。
東福寺には、かつて「新大仏」と呼ばれる巨大な本尊がありましたが、明治初期に焼失してしまいました。その大きさを実感できる焼け残った左手が展示されています。左手だけで217.5cm!フォトスポットとして写真を撮ることができます。手と並んでの撮影、いい記念になりますね。
《展示風景》
東福寺の巨大伽藍を実感する3mを超える二天王立像は、昭和まで三門(山門)に置かれていましたが、今では収蔵庫に収められています。その像を間近に見ることができます。前に立つ人と比べるとその大きさがわかると思います。
ちなみに、東福寺の三門(山門)は、禅宗寺院ではわが国最古最大の遺構です。
《展示風景》
展覧会初出品の寺宝大公開!
この書?この絵?をご覧ください。東福寺開山の祖円爾(えんに)の孫弟子の虎関師錬(こかんしれん)の書と伝わるものです。展覧会初出品です。
絵のようでもあり、書のようでもあり、虎のようでもあり、怪物のようでもある・・・、まるで禅問答のような怪作です。前に立って、どのような意図で書かれたのか、考えてみてはいかがでしょう?
《展示風景》
東福寺は中世禅宗文化最大の殿堂
円爾が留学した中国で師事したのは、南宋禅宗界の重鎮である無準師範です。その肖像画は、南宋肖像画の極致と言われていて、国宝です。
絵の前に立つと、実際に柔和な微笑み、英知に満ちた顔貌の高名な僧の前に立っているような気持ちを抱かせます(展示は11月5日まで)。
《展示風景》
絵仏師明兆(みんちょう)の代表作がズラリ!
明兆は、東福寺を拠点に活躍した絵仏師です。江戸時代までは雪舟と並び称される高名な画人でした。明兆は、巨大伽藍にふさわしい大作を数多く制作しました。
その一つ、白衣観音図は、縦326.1㎝×横281.1㎝で、その巨大さは見るものを圧倒します。明兆最晩年の傑作です。11/5までの前期のみの展示です。
《展示風景》
そして、今展覧会最大の目玉は、五百羅漢図でしょう。一幅に10人の羅漢を描いた50幅本です。水墨と極彩色が見事に調和した、明兆の代表作です。14年にわたる修理事業後、初めて全幅が公開されます。期間を定めて、四期にわけて展示されます。
日本国内にある明兆の五百羅漢図全幅が一挙公開されるのは初めてです。お見逃しなく!
長らく所在不明だった50号は、この展覧会の準備過程でロシアのエルミタージュ美術館に保管されていることがわかったそうです。今回は、五百羅漢下絵を元に三年を費やして製作された復元模写が通期展示されています。
《展示風景》
東福寺では、令和の大修理完成記念として、11/11~12/3まで大涅槃図が特別公開されます。さらに、国宝の三門も特別公開されますから、ぜひ、展覧会の前後に足をお運びください。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2023年10月6日 ]
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