白みがかったピンク、グレー、ペールブルーのパステル画。何とも言えない空気、温度を醸し出す女性を、彼女にしか描くことのできない独特なタッチで描いたマリー・ローランサン。そんなローランサンの絵画と、同時代に活躍した女性とモードに焦点を合わせた展覧会が、2023年4月16日(日)~6月11日(日)の期間、京都市京セラ美術館にて開催されています。
第一章 狂乱の時代のパリ
第一次世界大戦が終わり、人々の心が自由に解放された時代のパリ。マリー・ローランサンは社交界で著名なグールゴー男爵夫人の肖像画など、女性たちを描いた作品で一躍脚光を浴びました。
ローランサンは、彼女と同い年でこの時代のファッションの世界で名を馳せたココ・シャネルの肖像画も描いています。この2人が同い年だったことにもびっくりでしたが、その肖像画をシャネルが気に入らず描き直しを求めたけれど、ローランサンも一歩も譲らず、というエピソードにも驚かされます。
画家の目に映る姿、もしかしたら否定したい自分の姿と、理想とする自分の姿とのギャップなのかも。2人の芸術家の揺るがない信念を感じた一幕でした。
マリー・ローランサン《マドモアゼル・シャネルの肖像》 1923 年 油彩/キャンヴァス パリ、オランジュリー美術館 Photo ©RMN-Grand Palais(musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
第二章 越境するアート
ピカソ、藤田嗣治、写真家マン・レイなど世界中から集まった若者がパリで才能を開花させていた時代。多分野の個性的なアーティストに囲まれて、マリー・ローランサンの生きた時代はとても刺激的な日々だったんでしょう。
色々な分野の芸術との出会いが融合して化学反応を起こす、すごいコラボレーション。他にも女性の画家はいましたが、ローランサンは中でも抜きん出た感性をもった存在でした。
彼女はこの頃バレエの舞台衣装も手がけています。同じファッションでもシャネルの世界とは全く異なる世界で興味深い展示でした。
会場風景
第三章 モダンガールの登場
この時期は、コルセットで締め付けるのが当たり前の時代から、ファッションの世界も変わってきました。戦争によってシンプルさが求められた時代背景もあって、機能的にもかかわらずお洒落なデザインが脚光を浴びます。大きな羽飾りのついた帽子から、シンプルな美しいフォルムの帽子へと変化。心の解放が求められた時代だったのでしょう。
ここで面白かったのは、マン・レイが撮影したシャネルの肖像です。ジュエリーで着飾った黒のドレスに咥えタバコでスタイリッシュ。かつて彼女が拒絶した、ローランサンの描いた肖像画とは全く異なる、洗練された強い女性像が印象的でした。
会場風景
会場風景
エピローグ 蘇るモード
2011年の春夏オートクチュールでシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドが発表したのは、マリー・ローランサンを彷彿とさせる淡いピンクの色合いのドレスでした。あれほどぶつかり合った2人がようやく融合する、面白い視点の展示でした。
[ 取材・撮影・文:Marie / 2023年4月14日 ]
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