愛知県瀬戸市にある愛知県陶磁美術館で「ホモ・ファーベルの断片 -人とものづくりの未来-」展がはじまりました。
本展には36名の作家が参加し、展示作品は160点以上と大規模です。また、展示会場は、本館、南館、古窯館に分かれていて、とても広いです。
美術館中庭 桑田卓郎《untitled》 2016-2021年 個人蔵
Ⅰ章「創造の源泉-素材-」
会場の南館で目を引いたのは、奥直子の不思議な生物たちです。 鹿に似た獣の胴体は大きく割れ、牛に似た獣の頭部にはうねった角が生えています。 割れた部分から作品の内側の空洞が見えることで、形は様々でも器を意識しているように思われます。
会場風景 奥直子《稀》2022年 個人蔵
独特な危うさを感じさせる柴田眞理子の作品もあります。あいちトリエンナーレ2016で見て以来なので、久しぶりです。本展でも、作家によるワークショップを予定しているそうです。
会場風景 柴田眞理子《ライトボックスの中の静物 「ホモ・ファーベルの断片」展のために》2022年 個人蔵、《不在のダイアローグ 見えないものに眼を注ぐ》2022年 個人蔵
他にも見どころはありますが、普段の南館の展示を見慣れた方には、「展覧会によって、ずいぶんと空間の雰囲気が変わるものだ」と実感できるのではないでしょうか。
Ⅱ章「ars(アルス)-技法/技術-」
本館1階の展示室には、伝統工芸品が多数展示されています。
色鮮やかな鉢や花器に交じって、ひときわ目を引く、尖った作品を見つけました。 大きさの異なる四角形を何層も重ねた山浦陽介の作品は、近未来の尖塔のように天空を指しているようです。あるいは、巨大な巻貝の化石か、長い尾を引いた彗星のようにも見えます。
会場風景 山浦陽介《白尖》2020年 個人蔵
Ⅲ章「場-記憶/原風景-」
地下の展示室には、ものの質感の対比として、とても面白い作品があります。一方は、どっしりとした素焼きの埴輪の魔人、一方はふわふわと漂うカラフルなバルーンです。 同じ展覧会に並んで出品されているのがとても不思議に思われます。
会場風景 左 岩村遠《Neo Jomon:Haniwa-Majin-》2020年 個人蔵、 右 中田ナオト《ワレワレハ》2020年 個人蔵
本館を出て、橋を渡って古窯館に向かいます。こちらには、本展の作品の中で一番大きな作品があります。この作品には、瀬戸のいろいろな建物や場所が描かれています。もしかすると、皆さんの見知った建物や場所かもしれません。
会場風景 川田知志《瀬戸風景2022》2022年 個人蔵
話は、Ⅰ章に戻りますが、本展で一番驚いた作品がこちらです。
さて、作品はどこでしょう。
会場風景 植松永次《満開の土》2022年 個人蔵
草地に散在するむき出しの土の部分、これも作品です。陶芸作品の素材は土ということを、再認識させてくれます。陶芸のミニマルアートというところでしょうか。
最後に、本展期間中には、アーティストトークやラーニング・プログラム、ナイトミュージアムも開催予定です。詳しくは美術館HPを参照してください。
なお、本展では、勾配のある屋外を移動します。歩きやすい履物で訪問することをお勧めします。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2022年7月16日 ]
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