國華の編輯委員と
東京国立博物館の研究員によって企画された本展。展覧会は4章構成、全12テーマという巨大なスケールです。
第1章「祈りをつなぐ」は、仏像が林立するドラマチックな展示室から。中国とは異なり、彫刻に適した石が無い日本。木による仏像は、鑑真とともに渡来した工人から、日本の工人に広まりました。
白象に乗った普賢菩薩が合掌するのは、平安時代から。国宝《普賢菩薩像》(東京国立博物館蔵:前期展示)もこのスタイルで、新制作の展示ケースにより、近寄って鑑賞できます。
日本に仏教が広まる過程でつくられたのが、偉大な祖師の生涯を描いた伝記絵です。国宝《聖徳太子絵伝》(東京国立博物館蔵)は、現存最古の祖師絵伝です。
第1章「祈りをつなぐ」第2章は「巨匠のつながり」。雪舟等楊は、約200年前の元や南宋時代の絵画だけでなく、同時代の明の絵画も吸収。「画聖」と称される独自の世界に到達しました。
俵屋宗達は、文学や謡曲を主題にした作品が得意。古画の図葉をそのままトリミングして再配置した「わかりやすさ」は、宗達の特徴のひとつです。
同じ中国画を模写した伊藤若冲と狩野探幽ですが、その違いは顕著です。若冲の鶏の作品は、似たかたちを繰り返しつつ、変容も見られます。
第2章「巨匠のつながり」第3章は「古典文学につながる」。伊勢物語や源氏物語は平安時代の人気小説ですが、名場面を象徴するモチーフは、後年の絵画や工芸に取り入れられました。
伊勢物語なら、燕子花と橋で『八橋』、蔦と楓の山道で『宇津山』。これらの「お約束」は、公家にとって必須の教養です。
源氏物語も、近世に至るまでさまざまの作品に用いられています。特に『夕顔』(牛車など)と『初音』(松枝・鶯・髭籠)は人気がありました。
第3章「古典文学につながる」第4章「つながるモチーフ/イメージ」は、自然や人をテーマにした名作と、その型を受け継いだ作品です。
正月に展示される事が多い、国宝 長谷川等伯筆《松林図屛風》も登場(前期展示)。風俗図から人物表現への流れとして、国宝 岩佐又兵衛筆《洛中洛外図屛風(舟木本)》から、菱川師宣筆《見返り美人図》への変遷も紹介されています。
最後の「古今をつなぐ」はユニーク。近代絵画の岸田劉生の作品に対し、浮世絵版画や寒山拾得図など東洋絵画からの影響を見てとります。
第4章「つながるモチーフ/イメージ」広い会場ですがテーマが多い事もあり、テーマごとの作品は少数精鋭。ぎゅっと凝縮された、とても密度が濃い展覧会です。おすすめしたいのが、名作同士のつながりが図解で解説された図録(2,500円)。入門書としても最適です。
展覧会は5月6日(日)までの前期と、5月8日(火)からの後期を含め、細かく分けると5回の展示替えがあります。昨年再発見された雪舟《倣夏珪山水図》は後期展示、リピーター割引(半券提示で100円引き、詳細は公式サイトで)もご活用ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月12日 ]■名作誕生 つながる日本美術 に関するツイート