愛知県美術館で「トライアローグ 横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」展が始まりました。愛知県美術館のコレクションに加え、横浜美術館、富山県美術館のコレクションの代表的な作品が約120点、展示されています。
ふと、2007年に開催された「愛知・岐阜・三重 三県立美術館協同企画 20世紀美術の森」展のことを思い出しましたが、今回は、ほとんど見たことのなかった富山県美術館の作品に目を惹かれました。
展覧会の大垂幕
第Ⅰ章 1900s- アートの地殻変動
同じ作品でも、左右に並ぶ作品や、展示場所の照明、広さ、背景の壁の色などにより、印象がガラリと変わるという体験はないでしょうか。本展では、各所でそのような発見があります。
コンスタンティン・ブランクーシの≪空間の鳥≫は、横浜美術館で見た時よりも、一段と大きく感じました。展示室の中央に置かれ、視界に他の作品が入るので、大きさを比較しやすいからなのか、展示台自体が高くなったのでしょうか。
展示風景 第Ⅰ章 1900s- アートの地殻変動
マルセル・デュシャンの映像作品≪アネミック・シネマ≫も出ています。
映像作品のコレクションは横浜美術館の特色です。いろいろな渦巻きが繰り返し映し出され、目が回りそうです。このコーナーには、デュシャン兄弟の作品が集まっています。
展示風景 第Ⅰ章 1900s- アートの地殻変動
ナウム・ガボの≪空間の構造≫は、金属製のメッシュを組み合わせた構造で、サイズは大きいのですが、軽やかな印象です。ところで、この作品に上下はあるのでしょうか。見る角度によって上下が逆転しているように見えます。
展示風景 第Ⅰ章 1900s- アートの地殻変動
第Ⅱ章 1930s- アートの磁場転換
メレット・オッペンハイムの≪りす≫を見て、面白いと思ったのは、一対の作品ではなく、一方は横浜美術館のコレクションで、もう一方は富山県美術館のコレクションということです。並べて展示されているので、てっきりペアの作品と思っていました。
展示風景 第Ⅱ章 1930s- アートの磁場転換
モビール作品で有名なアレクサンダー・カルダーの≪片膝ついて≫のキャプションを見ると、この作品もゆらゆらと動くそうです。とはいえ、重量感のあるブロンズ製なので、風が吹いたくらいでは動きそうにありません。
展示風景 第Ⅱ章 1930s- アートの磁場転換
会場のところどころで、「Artist in Focus」と題して、同一作家の作風の異なる作品がまとめて展示されています。
各美術館のコレクションを持ち寄ることで、展示作品の幅が広がり、その作家について新しい発見があると思います。「Artist in Focus」は、本展の特色にもなっています。
展示風景 第Ⅱ章 1930s- アートの磁場転換
第Ⅲ章 1960s- アートの多元化
フランシス・ベーコンの≪横たわる人物≫は、初めて見たと思います。ゲルハルト・リヒターの≪オランジェリー≫も、初めて見ましたが、同じく富山県美術館のコレクションです。
この章では、富山県美術館の現代美術コレクションの層の厚さ、作品選択の新しさに驚きました。
展示風景 第Ⅲ章 1960s- アートの多元化
イヴ・クラインの≪肖像レリーフ アルマン≫は、愛知県美術館のコレクション展でも見かけますが、フランク・ステラとクラインの作品と並んだところは見たことがないので、新鮮な印象です。
展示風景 第Ⅲ章 1960s- アートの多元化
ジム・ダインの「Artist in Focus」にも愛知県美術館の作品が出ています。愛知県美術館がコレクションしたジム・ダインの作品を思い出せますか。 (答えは、写真の作品の対面にあります)
展示風景 第Ⅲ章 1960s- アートの多元化
出口付近に、各美術館が作品をコレクションした時期をまとめた年表があります。最近は、各美術館とも20世紀美術の新収蔵品が増えていないようです。この傾向は、本展に参加した美術館以外でも同じと聞きました。
海外から作品を借用して行われる大規模巡回展も楽しみですが、「トライアローグ」展のように地元の美術館のコレクションを目玉にした展覧会にも、親しみを感じます。
これからも、各地の美術館のコレクションが継続して充実し、10年後、20年後にも次の「トライアローグ」展が開催されることを希望します。
会場風景 作品をコレクションした時期をまとめた年表
なお、展示室内の写真は、特別に許可を得て撮影したものです。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2021年4月23日 ]
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