昨年閉館した宝物展示室に代わる施設として、2019年10月26日(土)に開館した明治神宮ミュージアム。立地は明治神宮南参道の中ほどで、JR原宿駅表参道口から5分程度です。
薄い屋根が大きく横に張り出す建築を手掛けたのは、隈研吾さん。大きなガラス壁面から見える室内は木が各所に用いられ、特に夕暮れ時は抜群の美しさです。
館内は2フロアで、1階にはインフォメーションやミュージアムショップのほか、左手奥には「杜の展示室」が。ここでは映像や模型で明治神宮の概要を紹介するほか、「百年」「一年」「一日」「一刻」と4つの時間軸で、明治神宮の日常が解説されています(ここのみの利用なら300円です)。
2階に進むと、展示室が2室。手前の「宝物展示室」はいわゆる常設展示で、明治天皇・昭憲皇太后ゆかりの御物が紹介されています。
中央に鎮座する見事な馬車は《六頭曳儀装車》。1889年(明治22)、憲法発布式の日に明治天皇が乗った英国製の馬車です。修復され、車輪の赤色が蘇りました。
右手には、よく知られる明治天皇の肖像画《明治天皇御尊影》。明治天皇は写真嫌いだったため、「密かに拝写」する事をエドアルド・キヨッソーネに依頼。相撲を天覧していた明治天皇を、隣室で描きました。
《御常用御机》は、明治天皇が実際に執務で用いた机。よく見ると、天板の緋毛氈には擦れた跡が確認できます。
続く「企画展示室」では開館記念展が開催中です。前期展では明治天皇・昭憲皇太后が使われた品々を、後期展では明治神宮の内陣に安置されていた屏風が中心に展示されます。
和装の《明治天皇御尊影》は、五姓田芳柳の制作。明治天皇が瓦斯会社を視察された後、許可を得て描かれました。
奥には華麗な女装束がずらり。右端の小さな振袖は、英照皇太后(明治天皇の嫡母)が幼少期に着用した品です。
楊齋延一の《明治天皇錦絵「太平豊の壽」》は、嘉仁親王(大正天皇)と九條節子(貞明皇后)のご結婚を、想像力豊かに描いた作品です。ちなみに貞明皇后は満15歳で結婚、昭和天皇は翌年誕生しました。
展示室の最後には映像ルームもあります。それほど大きくはない部屋ですが、3面の映像に囲まれると臨場感たっぷりです。
訪日外国人の人気スポットでもある明治神宮。またひとつ、世界に自慢できるミュージアムが増えました。休館は木曜日とややイレギュラーなのでご注意ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年11月5日 ]