雑誌のグラビアや写真集などで、精力的に活動している篠山紀信(1940-)さん。本展は篠山さんの膨大な仕事の中から、自身が選んだ写真を大型パネルに仕立てて、美術館の大空間に展示するものです。
会場の構成は、巡回してきた他の会場と同様に5章構成。ただ、開催ごとに会場となる土地のゆかりの人物写真が入っており、本展でも横浜出身の草笛光子(女優)や、ゆず(音楽ユニット)など6点が展示されています。
「GOD(鬼籍に入られた人々)」
「STAR(すべての人々に知られる有名人)」
「SPECTACLE(私たちを異次元に連れ出す夢の世界)」
「BODY(裸の肉体―美とエロスと闘い)」
「ACCIDENTS(2011年3月11日―東日本大震災で被災された人々の肖像)」
「GOD(鬼籍に入られた人々)」「STAR(すべての人々に知られる有名人)」震災をテーマにした最終章を除くと、写真のモデルは誰もが知っている有名人ばかり。モデル自身の存在感の大きさに加え、メートル単位にした写真の物理的な大きさで、写真が持つ力=写真力が迫ってきます。
「写真に包まれる体験」こそが、本展の意図。そういう意味では写真展というよりもインスタレーションといった方が近いかもしれません。
写真が撮影されたのは、1968年から2016年まで。亡くなった人だけでなく、現在活躍中の有名人が若い頃の写真も多いため、当時を懐かしんでいる来館者も数多く見られました。1枚の写真が時代の記憶と直接つながるのも、この展覧会の魅力といえます。
「SPECTACLE(私たちを異次元に連れ出す夢の世界)」「BODY(裸の肉体―美とエロスと闘い)」「ACCIDENTS(2011年3月11日―東日本大震災で被災された人々の肖像)」同時開催のコレクション展も写真の特集展示です。本展会場の横浜美術館は写真がコレクションの柱のひとつですが、意外にも全館が写真の展覧会になるのは今回が初めての機会です。
また展覧会にあわせて、横浜美術館の美術情報センターでは、篠山さんの写真作品や対談などが紹介された写真雑誌『アサヒカメラ』なども展示されています。篠山さんが新人だった時代の写真のほか、山口百恵を写した1979年7月増刊号など記念碑的な一冊も紹介されています。こちらは手に取ってご覧いただけます(貸出は行っておりません)
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年1月7日 ]■篠山紀信展 写真力 に関するツイート