伊達政宗が創建した、現在の瑞巌寺。寺としての歴史は古く、平安時代に遡ります。慈覚大師円仁が天台宗延福寺として開創、鎌倉時代には禅宗に転換して臨済宗円福寺に、室町時代には衰退していましたが慶長年間に伊達政宗が復興し、瑞巌寺と名を改めました。
展覧会は瑞巌寺の至宝とともに、仙台市博物館が所蔵する伊達政宗関連の資料などを紹介する企画。瑞巌寺と仙台藩の歴史をひもといていきます。
展示室1~2展覧会最大の見ものが、国の重要文化財に指定されている五大堂本尊の五大明王像。五大堂は瑞巌寺の門前からは少し離れた小島に建つ仏堂で、五大明王像は現地でも33年に一度しか公開されていない秘仏です(前回は2006年、次回は2039年)。寺外で公開されるのは五大堂の歴史上初めて、実に貴重な機会となりました。
五大明王は不動明王を中心に、降三世(ごうざんぜ)明王、軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳(だいいとく)明王、金剛夜叉明王(または烏枢沙摩(うすざま)明王)の5体。瑞巌寺の五大明王像は平安時代前期の作と見られる一木造り。内刳り(うちぐり:像の干割れを防ぎ軽量化を図るため、像内を空洞にする事)もありません。小ぶりではありますが、堂々とした佇まいです。
重要文化財《五大明王像》展示室5には欄間がずらり。瑞巌寺本堂を彩る7面の花鳥図で、こちらは国宝に指定されています。
掘ったのは「天下無双の匠人」と称された刑部左衛門国次(おさかべさえもんくにつぐ)。紀州の名工で、当地では仙台城本丸大広間の装飾彫刻なども手掛けています。
孔雀や牡丹など吉祥のモチーフのほか、伊達家一門の詰所には鶴が雛に餌を与えている彫刻で一族の親和をあらわすなど、政治的な意匠も見られます。
国宝《瑞巌寺本堂彫刻欄間 花鳥図》瑞巌寺蔵最後の展示室では、伊達政宗関連の資料を紹介。派手なデザインの陣羽織は、いかにも政宗のイメージにぴったりです。
秀吉と家康の間で見事な立ち回りを見せて戦国時代を生き延びた政宗。優れた武将であると同時に、和歌や書で優れた才能を発揮するなど、文化人としても豊かな資質を持っていました。
会場には目を引く等身大の木像のほか、正宗が描いた絵画《梅に雀図》(新発見)も展示されています。
展示室7三井記念美術館は、
根津美術館、
五島美術館とともに「三館合同キャンペーン」を今秋も開催中。本展と、
根津美術館「円山応挙」(11/3~12/18)、
五島美術館「平安古筆の名品」(10/22~12/4)の3展を対象に、半券提示で入館料を100円割引。3展とも行くと、1館の次回展が無料になります。詳しくは各美術館のサイトでご覧ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年10月12日 ]■松島 瑞巌寺と伊達政宗 に関するツイート