18点が紹介された前回展もかなりの迫力でしたが、今回は一挙に49点。国指定の重要文化財は16点、滋賀県指定有形文化財が7点、長浜市指定文化財が20点で計43件、実に88%が指定文化財という豪華なラインナップです。
戦国時代に何度も戦火に見舞われながらも、大切に守られてきた長浜の観音像たち。祀られているのは決して大きな寺社ではありませんが、人々の静かな想いが込められた観音さまは、今なお暮らしの中に息づいています。
観音像に包まれる空間は圧倒的観音様に囲まれた展示室は、厳粛な趣き。出展数が多いので、鑑賞する方それぞれでお気に入りの観音様を見つけていただければと思いますが、注目の何点かをピックアップしてご紹介したいと思います。
展覧会のメインビジュアルになっているのが、黒田観音寺の《伝千手観音立像》。平安時代の作で像高200センチと、今回の出展物の中で最大の観音さまで、国指定の重要文化財。お堂の外で公開されるのは今回が初めてです。
千手観音像の多くは手が42本造られますが、こちらは18本。展覧会場に来た事で、普段は厨子の中にあるために見る事ができない足元の衣文線まで見られるとともに、背後に回っての鑑賞も可能です。
観音寺《伝千手観音立像》こちらも国指定重文で堂外初公開の、医王寺《十一面観音立像》。井上靖の小説「星と祭」にも登場する観音さまです。
衣のひだは大波と小波が交互に現れる「翻波式(ほんばしき)衣文」で、平安時代前期(9世紀後半)の作。実は近代になってから長浜の古美術商から買い求められたというユニークなエピソードも伝わります。
医王寺《十一面観音立像》像高38.5センチの可愛らしい仏像が、竹生島・宝厳寺の《弁才天坐像》(長浜市指定文化財)。
琵琶湖に浮かぶ竹生島は、古くから弁才天信仰の聖地であり、戦国武将の浅井氏とも縁が深い場所。像は室町時代(弘治3年・1557)の作で、頭に宇賀神(顔が翁、体が蛇のユニーク神像)、鳥居がついた宝冠を被り、手は8本。フォルムはシンメトリーで、異様に落ち着いた表情が心に残ります
宝厳寺《弁才天坐像》首都圏で活発な広報を続ける長浜市。3月には上野の不忍池のほとりに、文化情報発信拠点「
びわ湖長浜 KANNON HOUSE」も開設しています。檜で造られたお堂が設けられ、本物の観音さまを設置し(2カ月ごとに展示替え、現在は川道町・尊住院の聖観音立像を展示)、観光情報も発信しています。
場所は京成上野の池之端口を出たら目の前のビルの1階、入場無料ですので展覧会の帰りにお立ち寄りください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月4日 ]■観音の里の祈りとくらし展 に関するツイート