公募団体に出品する作家の中から、今後活躍が期待される50歳以下の若手作家を選抜し紹介する都美セレクションも、今回で4回目。今年は27の団体より選出された55名から、さらに審査を経て5名の作家が紹介されています。
森美樹さん(1968年生)は徳島県出身。植物の美しい盛りと朽ちる姿が印象的な作品です。《十月の贈りもの》は、季節外れの夏の蝶を見つけたことに対する喜びと、仲間もないまま一匹で死んでいく蝶の今後に思いをよせて描きました。
森美樹(1968年生 日展 )花澤洋太さん(1967年生)の作品は、ゆったりと波打つ大きな画面。長年取り組んでいる連作《もり》より、3点が出品されています。「大きな作品のいいところは、画面の中に埋没できること」と話す花澤さん。レリーフ状になった絵具の層の表情は、ぜひ近寄ってお楽しみください。
花澤洋太(1967年生 独立美術協会)西村大喜さん(1986年生)は、石彫刻。大学時代に課題で取りくんだ石彫をずっと続けています。作品のモチーフは植物ですが、ふくらみやしわなどの、動物的な要素も感じられます。お遍路で出会った集落で大切にされる仏像やお地蔵さまのように、愛される彫刻をつくりたいと語ります。
西村大喜(1986年生 国画会)武田司さん(1970年生)は工芸部門での選出。一見するとでは絵画のようですが、漆工芸で作られたレリーフです。画面に近寄って見ると、繊細な超絶技巧に驚きます。気の遠くなるような作業は、細かな工程表で計算されて作られます。その対極ともいえる漆絵も出展されており、自由に描くことがいいバランスになっているそうです。
武田司(1970年生 日展)戸田麻子さん(1990年生)は都美セレクション史上最年少。目を引くにわとりの磔刑図2作はイタリア留学で目にした宗教画に圧倒され、自分も負けない作品を作りたいと取り組みました。戸田さんにとってターニングポイントとも言える作品ですが、モデルになるにわとりを手に入れるのが大変だった、と笑って話してくれました。今回は新作3点も出品されています。
戸田麻子(1990年生 二科会)毎年恒例の本展は、今後の活躍が楽しみな方ばかり。隣の会場で開催中の「ボッティチェリ展」の半券提示で入場できます。会期が短いので、ご注意ください。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2016年2月18日 ]■都美セレクション 新鋭美術家 2016 に関するツイート