植物の種類は、ざっと30万種。ワインはその中のブドウ属からしか作る事ができません。会場はまず、ワインの原料であるブドウの紹介からです。
日本で栽培されるブドウは生食用がほとんどのため、ワイン用のブドウは、私たちが知っているブドウとちょっと印象が異なります。栽培方法や病気についてパネルや映像で解説された後、ブドウの収穫はゲームで体験。難しく無いので、小さな子どもでも楽しめそうです。
第1部「ワイナリーに行ってみよう」ここからは、ワインの醸造所。「Chateau Kahaku(シャトー・カハク)」で、ワインを作っていきましょう。
まずはブドウの破砕から。フランスなどでは美しい乙女が行う「ぶどう踏み」も、ここは年齢・性別の制限なし。ブドウはイミテーションですが、足に伝わる感覚は妙にリアルです。
続いて発酵。発酵中の液の濃度を均一にするのが「ピジャージュ」です。ぎゅっと櫂を押すと音が聞こえますが、これはちょっと力が必要です。
圧搾、貯蔵、熟成と進んだ後は、瓶につめてコルクで栓をしたら完成。もちろん科博の展覧会ですので、発酵の科学的な作用や、ボトルの形状、コルクの機能などについても解説されます。
「シャトー・カハク」でのワイン造り紹介続いてワインの歴史について。約8000年前の西アジアでは、すでにワインの醸造が行われていた事が分かっています。
当初は自家消費用に作られていたワインは、神に対する捧げものへ。ワインを入れる器も時代が下ると高級品が作られるようになり、権力を誇示する象徴として用いられるようになりました。
日本にワインが入ったのは戦国時代ですが、本格的な流通が始まったのは明治以降です。殖産振興策として兵庫県に「播州葡萄園」が作られた事もありますが、これは害虫で壊滅しています。
第2部「ワインの歴史」最後はワインをさらに楽しむため、色と香りなどワインを取り巻くさまざまの秘密を分析します。
切っても切れない、ワインと香り。ワインは数百種類に及ぶ香りの成分が混ざっており、それぞれの成分には個性があります。会場には匂いの体験コーナーもあり、バラ、イチゴ、グレープフルーツ、ピーマンの香りを嗅いだ後、クイズに挑戦。4種のどれか+別の香りがブレンドされています。
展示の目玉といえるのは、2010年に沈没船から見つかったシャンパーニュ。1840年頃作られたもので、飲めるものとしては世界最古級。日本初公開となります。
アートとワインも親和性が高く、会場には美しい酒器もずらり。美術好きの人は、毎年異なる芸術家がラベルをデザインする「シャトー・ムートン・ロートシルト」のアートラベルは必見です。ブラック、ダリ、シャガール、ピカソ…バルテュスやニキ・ド・サンファルも手掛けています。
第3部「ワインをもっと楽しむ」専門的な知識がなくとも楽しめる構成なので、子ども連れでも大丈夫。大人の方は、地球館中2階のレストラン「ムーセイオン」でワイン展特別メニューも用意されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年10月30日 ] | | 図解 ワイン一年生
小久保尊 (著), 山田コロ (イラスト) サンクチュアリ出版 ¥ 1,296 |
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