金製品を中心に紹介する展覧会ですが、会場には金をテーマにした絵画も。入口近くの3点は、いずれも英雄イアソンが金の毛皮を手に入れるギリシャ神話を題材にした作品です。
階下に進むと、暗い室内に白骨が浮かび上がるので、ちょっと驚くかもしれません。骨のまわりにあるのが、世界最古(紀元前5千年紀)の金製品です。
発見された場所は、黒海沿岸にあるブルガリアの町・ヴァルナ。展示されているのは集団墓地のうちの第43号墓で、腕輪や指輪、衣装に使われていたと思われる飾り金具などが金製品。ピラミッドよりずっと前の時代のものなので、想像以上に古くから人は金に憧れていた事が分かります。
第1章「世界最古の金」2章以降は地域別、まずは古代ギリシャからです。
ミダス王が「からだが触れるすべてのものが黄金になるように」と神に申し出たところ、食べ物や飲み物まで金になってしまい、飲食もできなくなってしまう…。ギリシャ神話の「ミダス王の物語」は、金に対する欲望と金の魔性を暗示するものです。
ギリシャ人が得意としたのが、金線細工。まるで編み物のように、金線で細かな模様を作り出していきました。かなり小さな耳飾りですが、良く見ると繊細な装飾が施されています。
第2章「古代ギリシャ」現在のブルガリアを中心とする地域に住んでいた民族・トラキア人。トラキアと黄金を結びつける有名な資料が、ヴァルチトラン遺宝です。
鍋のような大きな器、柄杓、把手が付いた蓋など13の器物から成る黄金の遺宝で、総重量は12.425kgにもなります。
遺宝が見つかったのは1924年、農民が畑で土にまみれた金属製の容器を見つけました。大きなボウルを持ち帰って豚の飼葉桶にしたところ、豚が舐めまわした容器が眩いばかりに輝き出した、というおとぎ話のようなストーリー。分け前をめぐって争いになり、損傷してしまったものもあります。
第3章「トラキア」エトルリアは紀元前9世紀~紀元前2世紀に、イタリア中部にいた古代民族。エトルリア人は極めて高度な金細工の技術を持っていました。
その脅威の技術力は《動物模様のある留め金》で分かります。ハガキを少し縦に伸ばしたぐらいの大きさですが、列状に配置された動物はなんと131体。さらにそれぞれに対して、金の粒で細かな模様が付けられています。撮影時にもかなりズームしてようやく分かるほどという、信じられない細かさです。
古代ローマ帝国では、さまざまな地域で鉱山開発が行われました。スペインのラス・メドゥラスはそのひとつで、山にトンネルを掘って水を流し、水圧で山の斜面を崩落させるという豪快な手法です。山のかたちが変わってしまうほど掘り進められたラス・メドゥラスは、現在は世界遺産に登録されています。
第4章「エトルリアと古代ローマ」会場最後には、展覧会を特別協賛している(株)住友金属鉱山が金鉱石を展示。世界有数の金含有量を誇る菱刈鉱山の鉱石ですが、それでも1トン中に含まれる平均金量は約40グラム(普通の金鉱山は3~5グラム)に過ぎません。100万分の40ですから、改めてその希少さにはびっくりします。
なお、展覧会の開催にあわせ、「ミスターパーフェクト」と称される中華のアイアンシェフ・脇屋友詞さんがタイアップ・メニューを考案しました。赤坂の2店舗で会期中のみお楽しみいただけます。クリスマスやお正月など、お祝いの席にもぴったり。詳しくは
公式サイトのこちらのページでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年10月15日 ]■黄金伝説展 に関するツイート