白樺同人とロダンの交流は、同人たちが創刊前から準備をしていた特集号である、明治43年11月発行の「ロダン号」をきっかけに始まりました。同人たちは、ロダンの願いにより浮世絵を贈り、その御礼として彼から「ロダン夫人の胸像」「ある小さき影」「巴里ゴロツキの首」の3点の作品(現在:大原美術館所蔵・白樺美術館永久寄託)を明治44年に贈られました。
これは、日本に初めてもたらされたロダン作品であり、西洋近代美術作品の本物に触れる機会の少なかった当時としては画期的な出来事で、情熱を傾けた白樺同人のみならず、当時の若者たちへ感動と衝撃を与えました。こうした、『白樺』誌上の美術紹介、主催美術展覧会、また、贈られたブロンズ作品を公共のものとするために始めた「白樺美術館設立運動」の広がりは、白樺の美術活動によって多くの人が美術への関心を高めたことを現しています。
そして、ロダンは白樺同人たちの憧れの存在であり、それぞれにロダン観があります。武者小路実篤はロダンについて、「人生と自然とを調和さした人」「力と希望を与へる人」と書き、彼の個性を発揮し制作に取り組む姿勢に、芸術家そして人間として、生涯にわたり大きな感心と尊敬を抱いていました。
今回の展覧会では、こうした、白樺とロダンとの交流を物語るゆかりの美術作品に加えて、著書、書簡、原稿、当時の複製画や画集など関連資料にも注目し、作品と資料を丹念に追いながら、同人たちと思いや感動を共有します。また、同人たちのそれぞれのロダン観を著作、資料、愛蔵品などによりご紹介し、ロダンとの関わりを通して、身近に美術作品を見る楽しみやふれる喜びを伝えてきた白樺同人たちの美術に対する姿勢を振り返ることで、現代の私達が美術を楽しむようになるに至る過程で白樺の美術紹介が果たした役割を探ります。