大正時代は、自由や個人尊重を求めるデモクラシーの風潮や海外からの情報流通などを背景に、新しい芸術が一気に花開いた時代でした。そしてこのような時代の流れは山梨においてもさまざまな芽を育みます。
大正期の山梨では、県内初の洋画団体や岸田劉生に師事した土屋義郎による赤蓼会(あかたでかい)が結成され、甲斐美術会の洋画壇に結実しました。また二科会初の女性会友となり萬鉄五郎らと活動した埴原久和代や、フランスやアメリカに渡った石原美登利など女性洋画家も輩出しました。あるいは、大正期に青年時代を過ごした米倉壽仁は、古賀春江や福沢一郎から影響を受けてシュルレアリスムに傾倒しました。また戦前に没した手塚一夫や土橋芳次も、短い画業ながら鮮烈な印象を残しました。
一方、日本画においては、水墨画の近藤浩一路や新興大和絵の穴山勝堂の活躍のほか、大河内夜江、望月春江、古屋正壽ら山梨出身画家による昭和初期の帝展連続特選が日本画壇の話題となりました。
この他にも、岡田紅陽による富士山写真の撮影、浅川伯教・巧兄弟の朝鮮陶磁の見直しなど、この時期様々な芸術活動の展開が見られました。また戦時中に画家たちが各地の風物を描いたスケッチも貴重な資料と言えます。
本展では、大正から終戦期(1912~1945年)にかけての山梨ゆかりの芸術家たちの活動や当時の山梨の芸術的雰囲気を「山梨モダン」と呼び、関連する画家の作品や資料を併せて紹介いたします。