《前立「龍」》(本小札色々縅二枚胴具足より) 江戸時代中期
盛岡藩主が着用した儀式用の式正鎧として古式を踏まえて制作された具足。歴代当主を描いた「南部氏歴代当主画像」に9代藩主・南部利雄がこの鎧を着用した姿が描かれている。兜は黒漆塗四十四間四方白筋兜で、黒漆で固めて金箔を施した大振りな鍬形、中央には木彫りに金泥塗の龍の前立が据えられている。
担当者からのコメント
間近で見るととても迫力のある龍の前立。「南部家歴代当主画像」に描かれている35人の当主のうち、実に30人が龍の前立を据えた兜を着用しています。武将にとって最も重要な頭部を守る兜の鍬形や前立には、その武将の強い信仰と意志が込められているとされます。「龍」は南部家にとって、戦の守り神というだけではなく、畏敬の念を抱く対象、領地の平安・民の安寧祈念の対象だったのではないでしょうか。