《十二支扇子(卯)》
八戸藩主家である八戸南部家の旧蔵品で、同家より八戸市へ寄贈された資料です。十二支獣が1つずつ描かれた扇子12点一式の内の1点で、南部家の家紋「向鶴」の蒔絵が施された黒漆塗の箱に納められています。絵は盛岡藩お抱え絵師・川口月嶺(1811〜1871)のものと見られ、盛岡南部家とのつながりも感じられる貴重な資料です。
担当者からのコメント
人物や動物画を得意とした川口月嶺は、写実的なやさしい作風で知られています。こちらに背を向けた黒兎と、背中合わせに振り返る白兎。本資料の兎たちには、やわらかな動きが感じられます。また、2羽のそばに描かれた早蕨は、おだやかな春の雰囲気を思わせます。近世絵師の作品としても、南部家の歴史を感じるものとしても、魅力的な資料です。