《こころのリンク-均衡-》 小田橋昌代
撮影:室澤敏晴
小田橋昌代は、主に人間をモチーフに、型にガラスを詰めて焼成する「キャスト」と呼ばれる技法を用いて作品の制作を行っています。作家の生み出す人物像は、顔や手足といった素肌を見せる部分が不透明なエナメルにより着色され、独特の風合いを持つ一方で、身体を包む衣服が半透明のガラスにより形づくられています。光を柔らかに透かし見せる衣服の様子は、表された人物の存在を曖昧で希薄なものとすると同時に、作品全体に浮遊感を与えています。作品を通して作家が表現しようと試みるのは、「私的で内密な世界」です。私たちは、内なる世界と向き合うかのように目をつぶる小田橋の人物像と相対することで、作品を介して自身の内面へと意識を向けることとなるでしょう。
2011年に制作された本作《こころの均衡-リンク-》は、ウサギの耳付き帽子をかぶった二人の人物が背中合わせに座り、一筋の銀色の紐を互いに持つ姿で表されています。その様子から、自身の内面と向き合うことで見つけたもう一人の自分と、こころの中で対話をしているかのようにも見えます。
担当者からのコメント
ウサギの耳の付いた帽子をかぶる可愛らしい作品です。当館ウェブサイトの「コレクション」(収蔵品検索システム)でもご紹介しています。