《うさぎ〈未知草カード〉第三より》 田中恭吉 1912年頃
〈未知草カード〉は、田中恭吉(1892–1915)が日々持ち歩いていた小さなスケッチブックに記した絵の断片をまとめたものです。そこには1910年、18歳の年に和歌山市から画家を志して上京した青年の、20歳頃までの日常やふとした関心が描きとめられています。特にこの第三集は、1912年の11月末から京都で個展を開催する竹久夢二に随行し、恩地孝四郎とともに京都へ赴いた際の様子をまとめたものです。このうさぎは、個展会場である京都府立図書館の近くにある京都市紀念動物園(現、京都市立動物園)で描いたのではないかと推測されます。恭吉は翌1913年10月に喀血、結核を発症し、1915年、23歳の若さで亡くなります。遺作の多くは親友となった恩地が大切に守り続けたことで、うさぎを記したこの小さな断片もいまに伝わりました。
担当者からのコメント
えんぴつ特有の柔らかい線がふわふわした毛並みを表しているようで触りたくなります。
色んな角度から見たうさぎは無表情なのに何を考えているのかなぁっと見入ってしまいました。
そっぽを向いた黒い子 こっちを向いてほしいなぁ。
当館は田中恭吉をはじめ、和歌山出身の芸術家の作品もたくさん所蔵しております。
ゆっくりと楽しんでいただける空間を作ってお待ちしておりますので近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい。