三十六歌仙図屏風伊藤若冲 江戸時代 寛政8年(1796)
岡田美術館尊い和歌の名手たちを崇敬の対象として描いてきた「歌仙絵」は、江戸時代になると、くつろいだり遊んだり、親しみやすい様子に描くものが流行しました。伊藤若冲(1716~1800)も、そのようなパロディ化した歌仙絵を得意とし、いくつか作例を残しています。中でもこの屏風は、数え年81歳の作品です。
左隻第1扇の中ほど、黒装束の歌人の掌にちょこんと乗るペットのハツカネズミが見えます。右隻第3・4扇に見られる田楽豆腐作りと同じく、若冲が生きた当時、流行した風俗を反映したものです。もしかしたら若冲自身がハツカネズミを飼っていたのかもしれません。
担当者からのコメント:2020年10月3日から2021年3月28日まで、岡田美術館では、館蔵の若冲の作品全7点を一堂に会する展覧会「若冲物語」(仮題)を開催し、この屏風も展示します。艶やかな彩色画に優れた若冲であればこそ、墨の濃淡だけで描く水墨画にも秀でました。一見、略筆風の大らかな表現のなかに、対象を的確にとらえ、細部まで表情豊かに描き上げる丁寧な筆墨が認められます。若冲最晩年の自適の境地をご堪能いただきたいと思います。