第27回 小原正顕(和歌山県立自然博物館 学芸課長)
北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)の御前さんからご紹介いただきました、和歌山県立自然博物館の小原です。当館は1982年に開館ですので今年はちょうど40周年に当たります。当館は海水魚等を中心に約550種6000点の生物を飼育展示する第1展示室と、化石等の標本を主として展示する第2展示室で構成されています。これだけの規模で飼育展示と標本を中心とした展示を両立させているというのが大きな特色で、それでかつ「地元和歌山の自然」にこだわっているというところが大変ユニークと言えるでしょう。
当館の目玉を1つ挙げるとすればいろいろ迷うところですが、化石屋の私としては、やはり「和歌山で発見されたモササウルス類の化石」を推したいと思います。モササウルス類としては国内唯一の全身骨格化石で、推定全長は約6メートル。展示しているのは、化石が母岩にくっついた状態の時にシリコンで型取りして作製された産状レプリカですが、約7200万年前の海底でその骨格がどのような状態で埋もれていて化石化していったのかがリアルに想像できます。なお、化石の実物そのものは、すべて母岩から外れた状態になっていて現在研究中です。研究が終了次第展示する予定ですので、みなさん楽しみにしていてください。
和歌山県立自然博物館 モササウルス類化石の産状レプリカ
私のおすすめミュージアム
きしわだ自然資料館
私のおすすめのミュージアムは、大阪府岸和田市にある「きしわだ自然資料館」です。小規模な館ではありますが、岸和田を中心に大阪南部・泉州地域の自然について紹介する資料がぎっしりと詰め込まれていて、とても見ごたえのある展示内容になっています。
まずは1階、いきなり水槽による飼育展示コーナーが展開されており、さまざまな生物の生きた姿を観察できます。特にウミウシの飼育種数は充実しており、水族館に引けを取らないレベルです。
2階からが本番、さまざまな分野の魅力的な展示が盛りだくさんですが、古生物を専門としている私の一押しは「モササウルス」コーナー。地元で発見されたモササウルス類の下顎骨や椎骨等の化石と共に小型のモササウルス類の全身骨格(レプリカ)を観察することができるほか、パネルではモササウルス類の生きていた時の姿や、食べていたエサ、研究史に至るまで事細かに解説されています。おそらく常設展示では国内で最もモササウルス類に関する解説が充実しているのではないでしょうか。また、アンモナイトや二枚貝等他の化石標本も非常にクオリティーが高く、見学のたびによくぞこれだけ集めたものだと感心してしまいます。
最後の3階では動物の剥製を展示しているのですが、とにかくすごいです。半端じゃない数の剥製に圧倒されます。たぶん言葉でどれだけ言っても伝わらないので、これはぜひ実際に見て迫力を実感してほしいですね。
同館の魅力のポイントは「マニアックでユニークな視点を持っていること」だと思うのですが、だからこそ今や全国的に有名になった学習プログラムの「チリメンモンスター」を生み出すこともできたのでしょう。この視点でもって開催される特別展や企画展も大変魅力的ですし、機会がありましたらぜひ訪れてみてください。
きしわだ自然資料館
きしわだ自然資料館 寄贈された剥製