第26回 御前明洋(北九州市立自然史・歴史博物館 自然史課 学芸員)
島根県立三瓶自然館の井上さんからご紹介いただきました、北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)の御前です。
当館は、北九州市立歴史博物館、北九州市立自然史博物館、北九州市立考古博物館の3館が一体となり、2002年に開館しました。博物館があるのは、旧官営八幡製鐵所の敷地だった場所です。展示では、長さ約100メートルある展示室に恐竜などの多くの生物の骨格が行進してくるかのように配置されたコーナーや、復元された白亜紀の環境の中で恐竜が動くコーナーなどが見どころとなっています。
前身の一つである北九州市立自然史博物館は、北九州市内から白亜紀の淡水魚類化石が数多く発掘されたことをきっかけに1981年に設立されましたが、その当時から当館は研究活動を重視してきました。私はアンモナイトなどの化石を研究対象としている関係から、研究成果を展示に活かしやすいこともあり、研究に用いた実物標本を用いて最新の知見を紹介する展示、研究を行った当館にしかできない展示を実施することを目標に模索を続けています。
当館は、2022年に開館20周年を迎えることから、2023年2月にリニューアル工事が予定されています。新しい展示にどうぞご期待ください。
特別展「へんてこモンスター」(2018年)/当館の研究成果が目玉展示として紹介された
私のおすすめミュージアム
和歌山県立自然博物館
私のおすすめのミュージアムは、和歌山県海南市にある「和歌山県立自然博物館」です。博物館の建物は、和歌山市と接する海南市北西部の海岸に半分海の上に突き出すように建っています。本州で最も南に位置する和歌山県は温暖な気候で、周囲に広がる暖かい海には多様な生物が暮らしていますが、そのような和歌山県の自然を紹介する同博物館は、水族館としての要素が強いのが大きな特徴です。館内の水槽では、多くの水の生き物が生体展示されています。
それ以外にも、面積こそ水族館ゾーンには及びませんが、和歌山県の川や森などの自然や、地質に関する展示も充実しています。通常の展示ケース内だけでなく、観覧者が一段ずつ引き出して見学することのできる引き出しの中にも、多数の標本が展示されています。和歌山県からは、様々な時代の化石が見つかっていますが、その中でも、豊富に産出する中生代白亜紀の化石は「白亜紀動物化石群」として日本地質学会により和歌山県の化石にも選定されています。和歌山県立自然博物館には、アンモナイトや恐竜など、これらの白亜紀の化石が数多く展示されています。
同館の大きな魅力として、いつ行っても前回と異なる展示が見られる点があげられます。生体展示の生き物が、毎回違った動きを見せてくれるだけでなく、引き出しの中の展示への新たな標本の追加等が頻繁に行われています。私は、和歌山県から産出する白亜紀の化石の研究を行っている関係で、よく同館を訪れますが、毎回、ワクワクしながら見学させていただいています。
和歌山県立自然博物館の現在の密度の濃い展示もとても見応えがありますが、開館後40年を迎えた同館では、現在、再整備に向けた検討が進められています。少し先にはなりますが、新しい博物館にも期待しています。
和歌山県立自然博物館 外観
和歌山県立自然博物館 展示室