第25回 井上雅仁(島根県立三瓶自然館 サヒメル 学芸課長)
浜田市立こども美術館の糸川さんからご紹介いただきました、島根県立三瓶自然館の井上です。
当館は1991年11月に、大山隠岐国立公園の一角、三瓶山の北麓に開館しました。当時は同地区のビジターセンターとして、三瓶山の自然を紹介する展示やプラネタリウムなどを有する施設でした。2002年に拡充整備が行われ、三瓶火山の噴火で埋もれた三瓶小豆原埋没林の展示、天体観察施設、標本を保管する収蔵庫などが備わり、博物館としての機能が充実しました。
自然系博物館として、地域の動植物や岩石・化石を紹介することは当然ですが、当館で大切にしているのは、見るだけではなく、触る、聞く、匂うといった、五感を使った体験です。展示室には、毛皮や岩石に触れたり、鳥の鳴き声を聞いたりできるコーナーがあります。一歩野外に出れば、本物の草花や虫に出会え、三瓶火山の噴火でできた地層を見ることもできます。これらを活かした観察会は学校団体に好評で、子どもたちが自然を実感できる学習機会となっています。
自然との接点が少なくなる昨今、標本などの展示物だけでははく、野外の自然も活用して、身近な自然への理解を深めてもらう機会を提供しています。
島根県立三瓶自然館 サヒメル 三瓶小豆原埋没林の展示
私のおすすめミュージアム
北九州市立自然史・歴史博物館
展示室内でまず目を引くのが、ずらりと並んだ巨大な化石たち。なかでも、見上げるような大きさの恐竜たちは迫力満点です。かつて地球上でこんなに大きな生物が闊歩していたのかと想像するだけで、ワクワクが止まりません。展示されている恐竜の種類も豊富で、何度訪れても見飽きないほどです。上のフロアからも見ることができ、全体を俯瞰して見ると、その大きさに息をのむばかりです。
恐竜にばかり目が行きがちですが、展示室の入口から順を追っていくと、地球の誕生、生命の出現、そして生物の進化へと、豊富な標本をもとに丁寧に説明してあります。中生代のコーナーの後には、化石ゾウなどの古生物、さらに現世の多様な動物たちの剥製へと展示が続いています。
ところで同館には「いのちのたび博物館」という、もうひとつの名がついています。展示は「いのちのたび」をコンセプトに構築されており、過去から現在へ、そして未来へと、連綿と続く生命の歴史を実感することができるのです。自然系の展示ばかり紹介しましたが、館内には歴史系の展示室もあります。明治時代の茅葺き民家、昭和30年代の住宅の様子などは、どこか懐かしさを感じさせてくれます。
全館、見所満載ですが、私が好きなのが「ぽけっとミュージアム」。博物館ができるきっかけとなった魚類化石や、学芸員の研究成果などが展示してあります。博物館の地道な取り組みが、大きな成果へとつながったことを紹介した、きらりと光るコーナーです。
北九州市立自然史・歴史博物館 外観
北九州市立自然史・歴史博物館 展示室