第22回 落葉裕信(広島平和記念資料館 主任学芸員)
ひめゆり平和祈念資料館の古賀さんからご紹介いただきました、広島平和記念資料館の落葉です。
当館は、1945年8月6日に広島へ投下された原子爆弾による被害の実相を伝えるミュージアムです。被爆から10年後の1955年に開館した本館と1994年に開館した東館を渡り廊下で結んでいます。
開館以来、「もう二度と原爆の惨禍を繰り返してはならない」との思いで資料を収集し、展示してきました。被爆から77年を経た今もなお、被爆者や家族による資料の寄贈は絶えません。中には、遺骨代わりとなった形見の品もあります。大切な資料とともに託されるのは「忘れないでほしい。伝えてほしい」という強い思いです。
本館の「魂の叫び」のコーナーでは、寄贈者からの聞き取りなどにより蓄積した資料の背景情報を基に、遺品とあわせて遺影、亡くなった本人や家族の言葉を展示し、一人ひとりの生を浮かび上がらせています。来館される皆さんが、被爆者や遺族の思いに共感し、核兵器の恐ろしさをより身近に感じていただけることを願っています。
広島平和記念資料館 展示室 広島平和記念資料館提供
私のおすすめミュージアム
広島市江波山気象館
海に近い広島市南部の江波山の上に、江波山気象館があります。広島地方気象台として使用された建物は、全国初の気象をテーマとした博物館として開館しました。
館内には、気象予報や気象の仕組みについて学んだり、突風や雲の中を体験できるコーナーがあります。また、建物は原爆の被害の痕跡をとどめています。爆心地から約3.7キロメートルの場所で、原爆の強烈な爆風を受けました。ガラス片が突き刺さった壁や爆風により曲がった窓枠が保存されています。観測器材が被害を受け、出勤していた職員も負傷する困難な状況の中、被爆当日も途切れることなく、観測は続けられました。展示室にある原爆のさく裂直後から市内上空に雲が立ち上る経過を記した図や、当日の状況について広島市内外の人々に聞き取りした記録は、当館の展示にも活用しています。
建物の屋上に上ると、眼下に広島の街が広がります。風や雲の動きを感じながら、あの日の惨状を記録に残した職員たちの強い思いを感じることができる施設です。
広島市江波山気象館 外観
広島市江波山気象館 常設展示室 気象台の歴史と原爆に関する展示