第18回 岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員・専務理事)
台東区立朝倉彫塑館の戸張さんからご紹介をいただきました、原爆の図丸木美術館の岡村です。
原爆の図丸木美術館は、丸木位里(1901-1995)と丸木俊(1912-2000)が共同制作「原爆の図」を常設展示するため、1967年に埼玉県東松山市に開館した美術館です。位里と俊は原爆投下後の広島にかけつけ、敗戦後の占領下で原爆被害の報道が検閲を受けていた時期に、「原爆の図」連作を描きはじめました。そして国内外を巡回して、いち早く被爆の実情を多くの人びとに伝えました。その後も長年にわたって、さまざまな戦争や公害など社会の圧力や暴力によって傷つけられる存在を、生涯かけて描き続けています。
この美術館では、二人の画家の命への思いを受け継ぎながら、その多彩で豊かな芸術活動の魅力を紹介しています。近年は若い世代の芸術家を紹介する企画展も精力的に行い、「原爆の図」から現代へと続く、社会的な問題意識をもった芸術の系譜をつないでいく役割も目ざしています。
原爆の図丸木美術館 「東北画は可能か? 千景万色」展会場風景(2022年)
私のおすすめミュージアム
国立ハンセン病資料館
東京都東村山市の緑豊かな地に、ハンセン病の療養所・多磨全生園に隣接して、国立ハンセン病資料館が建っています。ハンセン病問題への正しい知識の普及啓発と偏見・差別の解消、そして患者・元患者とその家族の名誉回復を図ることを目的に充実した活動をされている施設です。過酷な環境と隔離政策などの人権侵害のなかで生き抜いてきた方々の生活や、尊厳の回復に取り組んできた運動の歴史を伝える常設展示には圧倒されます。
また、近年は「この人たちに光をー写真家趙根在が伝えた入所者の姿ー」(2014ー2015)、「キャンバスに集う~菊池恵楓園・金陽会絵画展」(2019)、「『青い芽』の版画展~多磨全生園の中学生が彫った「日常」の風景」(2021)、「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」(2022)など、表現することや生きることの根源を問うような素晴らしい企画展が目白押しで、私は胸を打たれながら何度も足を運びました。
ひとつのテーマを掘り下げることで、そこから世界の広さ、深さが見えてくる。ミュージアムの活動とは何かを教えてくれる、私のおすすめミュージアムです。
国立ハンセン病資料館 外観
国立ハンセン病資料館 2019年度企画展「キャンバスに集う~菊池恵楓園・金陽会絵画展」