第16回 山腋雄一(中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 館長・学芸員)
旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎の顕彰を目的として旭川市が1970年から開始した中原悌二郎賞は、戦後の日本彫刻界を代表する彫刻家たちの作品を継続的に旭川市へもたらすことになりました。当館は、この中原悌二郎賞の歴代受賞作品と中原悌二郎ら近代彫刻を中核とした彫刻コレクションの収蔵・展示施設として1994年に開館し、これらの収蔵作品の多くを2階常設展示室で展示しています。優れた彫刻作品を多数収蔵している美術館は全国各地に数多くありますが、近代から現代へと至る日本彫刻界の流れを俯瞰できる展示をいつでも見られる施設は少ないのではないでしょうか。彫刻に興味をお持ちの方や彫刻を本格的に学ぼうとされている方にはぜひ足をお運びいただきたいミュージアムとなっております。
また、2012年にはJR旭川駅の新築建替えに併せて駅構内に分館施設の「中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー」を設け、本館と連動した展示や市内各所に配置された野外彫刻のインフォメーションを行い、鉄道や駅前のバスターミナル等を利用される旅行客の皆さまに「彫刻のまち」の魅力を発信するよう務めています。本館と併せてご覧いただけますと幸いです。
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー 展示風景
私のおすすめミュージアム
台東区立朝倉彫塑館
お薦めしたいミュージアムは、肖像彫刻の名手として知られ、彫刻界で重きをなした朝倉文夫の邸宅とアトリエが美術館となった「台東区立朝倉彫塑館」です。
朝倉文夫自身が設計・監督したという建物や中庭は、構図や色彩、素材の扱い方など、細部に至るまで気が配られ、朝倉文夫のこだわりと多才さを感じさせます。
特に、自身の制作を行いながら朝倉彫塑塾として後進の指導を行う場所でもあったアトリエは、暖色系の壁面で照り返された光がブロンズ彫刻の重厚さを引き立て、作品の見応えをいっそう豊かなものとしています。
美術館などに足を運び作品を鑑賞することの醍醐味の一つが、作品そのものだけではなく「作品が置かれた空間の雰囲気を味わう」ことであると考えていますが、朝倉自らの手による空間と作品との共演は、ここでしか味わうことのできない至福の時間を与えてくれるものとなっています。
台東区立朝倉彫塑館 外観
台東区立朝倉彫塑館 朝倉作品を展示したアトリエ