学芸員が選ぶ おすすめミュージアム

    第15回 細矢久人(苫小牧市美術博物館 学芸員)

    細矢久人(苫小牧市美術博物館 学芸員)

    苫小牧市美術博物館の細矢と申します。当館の設置経緯については、前回、リアス・アーク美術館の山内さんにご説明をいただいていたので、そちらにお譲りしますが、当館は2013年にもともと博物館だった施設に美術館機能を増設したこともあり、かねてより、複合施設としての特性や場所性に特化した展示活動を実施してきました。山内さんにもご紹介いただいた展覧会シリーズ「NITTAN ART FILE」では、館内の学芸員と連携しながら、美術以外の他分野の資料を熟覧する機会を設けることで、それらを作品創作の源泉にしていただいたり、インスタレーションの一部として展示していただいたりするなど、当館ならではの領域横断的な活動によりその個性を打ち出しています。

    また、美術館機能の増設前から地元企業と連携した特別展を開催するなど、企業城下町としての地の利を生かした展覧会活動を継続的に実施しています。今夏にはトヨタ自動車北海道株式会社創業30周年記念事業の一環として、「芸術の都ウィーンとデザインの潮流」展を開催しますので、近くにお立ち寄りの際は、ぜひご来館いただければ幸いです。


    苫小牧市美術博物館 企画展「NITTAN ART FILE 3:内なる旅~モノに宿された記憶」(2019年)大島慶太郎作品展示風景(撮影=山岸靖司):当館所蔵の古写真や絵葉書を素材にしたインスタレーション
    苫小牧市美術博物館 企画展「NITTAN ART FILE 3:内なる旅~モノに宿された記憶」(2019年)大島慶太郎作品展示風景(撮影=山岸靖司):当館所蔵の古写真や絵葉書を素材にしたインスタレーション




    私のおすすめミュージアム

    中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館

    私がおすすめするミュージアムは、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館です。同館は、日本近代彫刻史に偉大な足跡を残した中原悌二郎の名前を冠した彫刻専門の美術館であり、“彫刻のまち旭川”の中心施設として彫刻を軸とした活動を展開しています。

    中原悌二郎の業績の顕彰と日本彫刻界の発展への寄与を目的として、旭川市が1970年に設けた中原悌二郎賞の受賞作品によるコレクションは、佐藤忠良、舟越保武、若林奮、舟越桂ら日本の彫刻界を代表する彫刻家の作品の数々を含むものであり、中原悌二郎とロダンらその周辺の彫刻家の手による近代彫刻のコレクションも加味すると、日本近現代彫刻の歩みを一望できる内容となっています。

    旧陸軍第七師団の「旧旭川偕行社」を建物として利用した同館の洋風建築は、国の重要文化財に指定されており、それ自体が一級の美術品といえます。かつて、将校たちの社交場として、軍関係の会議や講演会などにも活用された、その白亜の外観が美しい建築内には、往時を偲ばせる空間が広がっており、館内に展示された彫刻の優品の数々とあいまって、私たちに煩雑な日常を忘れさせてくれることでしょう。


    中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 外観
    中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 外観

    中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 常設展示室
    中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 常設展示室


    [ 第14回 ] リアス・アーク美術館
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